カーヌーンは西アジアから中央アジアで使用される弦楽器です。アラブ音楽ではウードやナイと共に演奏されることが多く、台形の箱に張られた無数の弦を指で弾いて演奏します。アラブ音楽の定番ともいえる楽器で、中東地域ではかなり有名な楽器の一つです。カーヌーンの起源はとても古く、紀元前のメソポタミアの弦楽器にまでさかのぼります。カーヌーンは、独特の音色で、とても印象的な楽器の一つです。
起源と歴史
中東でこの楽器は生まれました。アラブの伝統の楽器です。
カーヌーン(Qanun/Kanun)の起源と歴史について整理します。
1. 起源
- カーヌーンは、中東や北アフリカ、トルコ、アルメニアなどで用いられる伝統的弦楽器。
- 名前「Qanun(カーヌーン)」は、ギリシャ語 “κανών(kanōn)=規則・法則” に由来し、音階や音律の「規則」を意味する。
- 発祥は中世イスラム世界(約10世紀頃)とされ、アラブ世界の古典音楽と密接に関係。
- ペルシア(イラン)やアラビアの弦楽器の影響を受け、現代の台形状カーヌーンに発展した。
2. 歴史的発展
- 中世イスラム時代(10世紀頃)
- アラブ・ペルシア地域でザイター(弦楽器)やシタールに影響を受けて発展。
- 宮廷音楽や宗教音楽で使用される。
- オスマン帝国時代(15〜19世紀)
- トルコ宮廷音楽(ターキッシュクラシック)で定番楽器として定着。
- 弦の数や調律システムが標準化され、台形の形状が確立。
- マカーム(中東の旋法)演奏に適した構造が整う。
- 近代(20世紀以降)
- トルコ、シリア、レバノン、北アフリカで一般化。
- アラブポップス、クラシック音楽、ジャズとの融合演奏でも用いられるようになる。
- レバー(マンダル)による微分音調整機構が発明され、即興演奏やモード転換が容易に。
3. 現代の位置づけ
- 中東・北アフリカ音楽の中心的楽器として、宮廷音楽・民俗音楽・現代ポップスまで幅広く活躍。
- 欧米でもワールドミュージック・映画音楽・実験音楽で採用され、国際的に知られる。
- 現代モデルは、木材や弦の素材改良、精密レバー調整機構によって演奏性と音質が向上。
特徴と構造、サイズ
カーヌーン(Qanun/Kanun)の特徴・構造・サイズについて整理します。
1. 特徴
- 音色:煌めきのある明るい音色で、弦の共鳴による豊かな余韻が特徴。
- 表現力:マカーム(旋法)演奏に適しており、微分音(半音より細かい音程)や装飾音を表現可能。
- 演奏スタイル:膝上または台に置き、右手で弦を撥(ピック)や指ではじき、左手でレバー操作や抑弦する。
- 使用地域:中東、トルコ、北アフリカなど。現代はワールドミュージックや映画音楽でも使用。
2. 構造
| 部分 | 説明 |
|---|---|
| 本体 | 台形(トラペゾイド)の木製箱。底面・天板・弦面がある。共鳴箱として機能。 |
| 弦 | コース単位で張られ、1音につき 3本の弦 が一般的。弦は鋼または合金製。 |
| ピッチ調整レバー(マンダル/レバー) | 各コースごとに付属。演奏中に微分音や半音単位で調律を変えられる。 |
| 撥(ピック/指サック) | 右手で弦をはじくために使用。亀甲やプラスチック製が一般的。 |
| ブリッジ・ナット | 弦の支点となり、弦長・張力を決定。共鳴や音程安定性に重要。 |
- 一部の現代モデルでは、チューニングペグを改良して精密な調律が可能になっている。
- 左右に手を置きやすい設計で、マンダル操作と弦弾きを同時に行える。
3. サイズ・音域の目安
| 項目 | 標準サイズ |
|---|---|
| 全長 | 約95〜100 cm |
| 幅 | 約38〜40 cm |
| 高さ | 約4〜6 cm |
| 音域 | 約3.5オクターブ(42〜84弦程度、モデルによる) |
| 重量 | 約3〜5 kg(木材・弦の数による) |
- 演奏性:膝上に置くのに適した軽量設計。
- 弦数・音域:モデルによって42〜84弦程度。コース単位で3本弦が基本。
- 微分音対応:マンダル/レバー操作でマカームに応じた半音以下の音程も演奏可能。
種類について詳細
カーヌーン(Qanun/Kanun)の種類・モデル・地域差について詳しく整理します。
1. 地域・音楽ジャンルによる種類
(1) トルコ式カーヌーン(Turkish Qanun)
- 特徴:マンダル(レバー)が左右に複数あり、演奏中に微分音や半音単位の音程調整が容易。
- 弦数:通常72〜84弦(1音に3本の弦で1コース)。
- 音色:明るく煌びやか。トルコクラシックや民俗音楽に適する。
- 演奏スタイル:膝上または台に置き、両手で撥を使って弦をはじく。
- 代表メーカー:Kanun Kanun、Qanun El-Tarab、Kahramanなど。
(2) アラブ式カーヌーン(Arab Qanun)
- 特徴:レバー(マンダル)が少なく、伝統的な調律に基づく固定式モデルも多い。
- 弦数:通常72弦前後(コースごとに3弦)
- 音色:柔らかく、ウォームな響き。アラブ音楽の微分音階(マカーム)に対応。
- 演奏スタイル:膝上に置き、左手で微分音レバーまたは弦を押さえて調節。
- 用途:クラシック・民俗音楽・宗教音楽。
(3) 北アフリカ/マグレブ式(Maghreb Qanun)
- 特徴:アルジェリア・モロッコ・チュニジアで使用される。
- 弦数:60〜78弦程度。
- 音色:柔らかく、軽快なリズム演奏に適している。
- 奏法:右手で撥、左手でコースごとの微調整。
- 用途:アラブ・ベルベル音楽、民俗舞踊伴奏など。
2. 構造・機能による分類
| 分類 | 説明 | 特徴 |
|---|---|---|
| 固定式(Traditional / Fixed Qanun) | レバーなし。調律は演奏前に設定 | シンプルで初心者向き、微分音変更は不可 |
| マンダル式(Mandallı / Lever Qanun) | 各コースにマンダル/レバーがあり、演奏中に音程変更可能 | 即興演奏やモード移行に適する、上級者向け |
| ハイブリッド/改良モデル | 伝統構造+近代チューニングペグや弦材改良 | 音色安定・耐久性向上、現代音楽や録音向き |
3. モデル別特徴(代表例)
| モデル名 | 弦数 | レバー | 用途 | 音色の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Kanun El-Tarab Professional | 81弦 | 有(左右マンダル) | プロ演奏・録音 | 明るく煌びやか、共鳴豊か |
| Qanun Kahraman | 72弦 | 有 | トルコ民俗音楽 | 落ち着いた音色、微分音表現良好 |
| Traditional Arab Qanun | 72弦 | 無 | 伝統音楽 | 柔らかくウォーム、半音固定 |

カーヌーンの曲
カーヌーンはアラブ音楽の代表的な楽器です。主に民族音楽で使われることが多いです。
奏法、難易度
1. 基本奏法
(1) 右手の奏法
- 撥(ピック/サック)を装着して弦をはじく。
- 1コースにつき3本の弦があるため、**同音3本を同時に弾く「ユニゾン奏法」**が基本。
- 装飾音・トリル・アルペジオで表現力を増すことも可能。
(2) 左手の奏法
- マンダル(レバー)操作:演奏中に半音・微分音を調整。
- 弦押さえ/抑え:即興でマカーム(旋法)の音程を変える場合に使用。
- 一部モデルでは、左手で弦を押さえて滑らかに音程を変える「グリッサンド奏法」も可能。
(3) 両手の連携
- 右手:弦をはじく/トリル・装飾音
- 左手:レバー操作/抑弦/微分音調整
- 両手のタイミング・精度が演奏表現の鍵。
2. 応用奏法
- アルペジオ・和音奏法:数本の弦を同時に弾くことで伴奏に使用。
- ビブラート/トリル:右手の指・撥操作で音の揺らぎを表現。
- 即興演奏(タクシーム):マンダルで微分音を操作し、旋法を自在に変化。
- 合奏での役割:メロディ・伴奏・装飾音など多様に対応可能。
3. 難易度
| レベル | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 初心者 | 弦をはじいて単音・簡単な旋律を弾く | 右手撥操作に慣れることが第一。音程固定モデルなら比較的容易。 |
| 中級者 | 左手でレバー操作・半音微分音を調整、装飾音・アルペジオ | 両手の連携・マカーム理解・リズム感が必要。 |
| 上級者 | 高速タクシーム(即興)、微分音・装飾音を駆使した複雑演奏 | 高度な音感・タイミング精度、即興能力、合奏対応力が必須。 |
- 演奏自体は弦をはじくだけなので比較的早く音を出せるが、
- 微分音操作や即興演奏・高度な装飾音表現は習得に時間がかかる。
有名な奏者
1. 中東・トルコの著名奏者
- ラッシード・タフタウィ(Rashid Tahaoui)
- アラブ音楽界で知られるカーヌーン奏者。
- 伝統的なマカーム演奏と即興演奏で評価が高い。
- ハミド・アフナウィ(Hamid Al-Funawi)
- シリア出身の名演奏家。
- オーケストラ演奏やソロパフォーマンスで活躍。
- オスマン・タリク(Osman Talik)
- トルコのクラシック・カーヌーン奏者。
- 宮廷音楽や現代音楽に対応する多彩な演奏技法を持つ。
- ムハンマド・カレム(Mohammed Karem)
- レバノンやシリアの音楽シーンで活躍。
- トラディショナル音楽から現代アラブポップスまで幅広く演奏。
2. 現代ワールドミュージック/国際的奏者
- アニス・ハルキ(Anis Harqui)
- フランス・パリ拠点のカーヌーン奏者。
- ジャズやワールドミュージックとの融合で知られる。
- アブドゥル・カーディル(Abdul Qadir)
- カナダ・北米で活躍するアラブ音楽奏者。
- 多ジャンルとのコラボレーションが特徴。

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
こちらは Qanun(カーヌーン/カヌン)の新品・中古それぞれの製品ラインナップと価格相場の整理です。為替や輸入・梱包・関税などによって国内価格は変動しますので、あくまで「目安」としてご覧ください。
製品ラインナップ(代表的モデル)
以下は新品ラインナップの一部です。
それぞれ簡単にコメントします:
- Professional Turkish Qanun Kanun by Mustafa Saglam Wenge:高級仕様トルコ製、木材も色々良さそう、価格おおよそ 約¥206,000。
- Professional Arabic Qanun Kanun Walnut by El Tarab:アラブ仕様モデル、ウォールナット材使用、価格おおよそ 約¥199,000。
- Beautiful Turkish Qanun Kanun Esm1:トルコ仕様のやや抑えめモデル、価格おおよそ 約¥191,000。
- Beautiful Quality Turkish Qanun Kanun sr2:さらに価格が少し低めのモデル、価格例 約¥212,000。
- Beautiful Quality Turkish Qanun Kanun sr3:もっと手頃バージョン、価格例 約¥138,000。
- Qanun Accessories – Camel Skin & Pick Set:これは本体ではなくアクセサリーセットですが、価格 約¥8,830 と非常に手頃です。
価格相場(新品・参考)
- 一般的な新品のカーヌーン/カヌンの価格帯として、海外販売例では US $1,800〜$3,000 程度という表示があります。
- 日本円に換算すると、例えば US $1,800 が約 ¥300,000前後〜(為替1 US $ ≒ ¥170などで算出した場合)になるケースがあります。
- 国内・輸入モデル・仕様・材質・ブランドで幅がありますが、上記ラインナップで「約¥138,000〜¥206,000」あたりが比較的手の届く高級モデルの例となっています。
- 入門レベルや非常にシンプル仕様のモデルは、海外ショップで “Kid Size” や “Beginner” モデルとして US $1,750(約¥300,000前後)という表示も出ています。
中古・リユースの価格相場
- 中古品の明確な大量データは少ないですが、出品・オークションサイトでは「新品参考価格4,200円」といった掲示もあり、かなり幅広いことが確認できます。
- ただしその「4,200円」は本体ではなく関連物・アクセサリー、あるいは状態不良のジャンク品の可能性が高いので、実際に演奏可能な本体であればもっと高額になる見込みです。
- 中古品を購入する際は、状態(弦・駒・レバー機構)・付属品・修繕状態を確認したほうが良いです。
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