ガドゥルカはブルガリアで使用されている縦型フィドルです。金属共鳴弦付の木製梨型胴と短い棹をもつ弓奏楽器でメロディを弾く弦は3本あり、その下に10本ほどの共鳴用の弦が張りめぐらされています。この楽器は中東の楽器が祖先と言われています。舞踏音楽でよく用いられており、ブルガリアではとても知られている楽器です。ガドゥルカは主に民族音楽で使われることが多いですが、テレビやCMなどでも使われています。
起源と歴史
ブルガリアでこの楽器は生まれました。
1. 起源
- ガドゥルカは ブルガリア発祥の擦弦楽器 で、主に民族舞踊や民俗音楽に使用されます。
- 正確な起源は不明ですが、バルカン半島の中世擦弦楽器(ビザンツのリラやトルコのケメンチェなど)から発展したと考えられています。
- 伝統的にブルガリアの農村や祝祭で演奏され、踊りや歌の伴奏として中心的役割を担ってきました。
2. 中世から近代への発展
- 中世〜ルネサンス期
- バルカン地方の擦弦楽器文化の影響を受けながら、独自の構造と演奏法が形成される
- 木材を彫り出して作る一体型のボディ、フレットなしで指板上を弦に触れながら音を出すスタイルが確立
- 19世紀〜20世紀初頭
- ブルガリア民族舞踊の重要な伴奏楽器として一般化
- 共鳴弦(シンパティック・ストリングス)を取り入れることで、より豊かな音響効果を獲得
- 地域ごとの小さな派生型や調弦パターンが生まれる
3. 近代・現代での普及
- 20世紀後半
- 民族音楽の録音やラジオ放送により、ブルガリア国内外で知名度が上昇
- 音楽学者や民族音楽家に注目され、フォークフェスティバルでの演奏も盛んになる
- 21世紀
- 伝統音楽だけでなく、ワールドミュージックや現代音楽のアレンジでも使用
- 工芸的には伝統的手工法を継承しつつ、演奏者の好みに合わせた改良も進む
- 共鳴弦の数やボディサイズ、弦素材などのバリエーションが広がる
特徴と構造、サイズ
🎻 特徴
- 擦弦楽器
- 弓で弦をこすって音を出す楽器
- 主に民族舞踊や民俗音楽で使用され、独特のウォームで豊かな共鳴音を持つ
- フレットなし指板
- フレットを持たないため、指で押さえる位置の正確さが音程に直結
- 音程の微妙な変化や装飾音(グリッサンドやスライド)が可能
- 共鳴弦(シンパティック・ストリングス)
- 主弦の下や内部に複数本の共鳴弦を装備することが多い
- 弦の振動が共鳴弦に伝わり、豊かな倍音・リバーブ感を生む
- 民族舞踊に最適な音色
- バルカン特有の不規則リズム(5/8, 7/8など)に対応しやすい
- 明瞭かつ温かみのある音で、ダンスや歌伴奏に適している
🛠 構造
| 部位 | 特徴 |
|---|---|
| ボディ | 一体型または密接に接合された木製。クルミ、メープル、サイカモアなどの木材を使用。彫り出し成形が多い。 |
| トップ板 | 直線的な木目の軟材(スプルースなど)。ゆるやかにアーチ型を持つことがある。 |
| 指板 | フレットなし。弦に指を触れることで音程を調整。微妙な音程変化や装飾音に対応。 |
| 弦 | 主弦3〜4本、共鳴弦8〜16本程度。スチールや金属巻き弦を使用。 |
| 弓 | 独特の垂直持ち・アンダーハンド奏法が多い。 |
| サウンドホール | 小型〜中型の楕円形や丸形。音響共鳴を助ける。 |
📏 サイズ
- 全長:約65〜75cm(モデルや地域により差あり)
- 弦長(ボディ上の弦振動長):約40〜50cm
- ボディ幅:約20〜25cm
- ボディ厚:約5〜7cm
- 重量:約1.5〜2.5kg
特徴的ポイント
- コンパクトで膝上に置いて演奏可能
- 弓を垂直に持つ演奏姿勢が標準
- 共鳴弦により小型ながら豊かな音量を確保
種類について詳細
では ガドゥルカ(Gadulka) の「種類・地域的バリエーション」について詳しく解説します。
🎻 種類・地域的バリエーション
ガドゥルカはブルガリア国内で発展してきたため、地域ごとの伝統や演奏スタイルに応じて微妙なバリエーションがあります。大きく分けると以下のような種類があります。
1. 弦の本数による分類
| 種類 | 弦構成 | 特徴 |
|---|---|---|
| 標準ガドゥルカ | 主弦3本+共鳴弦5〜8本程度 | 最も一般的。民族舞踊伴奏に適している。 |
| 大型ガドゥルカ | 主弦4本+共鳴弦10本以上 | 音量・倍音が豊か。祝祭や集団演奏向き。 |
| 小型/ミニガドゥルカ | 主弦3本+共鳴弦少なめ | 子供や演奏学習用、携帯性重視。 |
2. ボディ形状・材質による分類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 一体彫り出し型 | 伝統的な手工法。木材をくり抜き、一体成形。共鳴が豊か。 |
| 板接合型 | 表板・裏板を接着して作る。現代的な製法で安定性が高い。 |
| アーチ型トップ | 弦振動を効率的に共鳴させる。主に伝統的な民俗音楽で使用。 |
3. 地域的バリエーション
| 地域 | 特徴 | 音色・演奏 |
|---|---|---|
| 北ブルガリア | 共鳴弦が少なめ、ボディ小型。踊りのテンポが速い地域向け。 | 明瞭で軽快な音色。 |
| 南ブルガリア | 共鳴弦多め、ボディ大型。ルチェニツァや複雑リズムの舞踊向け。 | 豊かな倍音とウォームな音色。 |
| 西ブルガリア | 弦材やボディ形状に独特の工夫。 | 音量・表現力が強化される。 |
4. 現代的・派生モデル
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 教育用/練習用ガドゥルカ | 弦が少なめで扱いやすい。小型で軽量。 |
| ワールドミュージック用ガドゥルカ | 金属弦・ピックアップ装備など、現代音楽でも使用可能。 |
| 限定職人工房モデル | 高級材・手工細工・装飾入り。音色が非常に豊かでプロ仕様。 |

ガドゥルカの曲
ガドゥルカはブルガリアの伝統音楽で使用されることが多いです。
奏法、難易度
では ガドゥルカ(Gadulka) の「奏法と難易度」について詳しく解説します。
1. 基本的な構え
- 膝の上に垂直に立てて置くか、立奏の場合はストラップで肩から吊るす
- 弓は垂直に持つ「アンダーハンド(下向き持ち)」奏法が伝統的
- 左手で弦に軽く触れ、指の側面や爪を使って音程を作る(フレットなしのため、正確な指の位置が必要)
2. 弾き方の種類
| 奏法 | 特徴 |
|---|---|
| 主弦弾き | メロディラインを演奏。フレットなしで指の位置を微調整し、滑らかな音程変化や装飾音を加えることが可能 |
| 共鳴弦活用 | 主弦の振動を共鳴弦に伝えることで、倍音やリバーブ効果を活かした豊かな音色を生む |
| グリッサンド/スライド | 指で弦に沿って滑らせる。ブルガリア民俗音楽特有の装飾音やメロディ表現に使用 |
| スタッカート・刻み | 速い舞踊リズムに合わせ、短く切る奏法。リズム感を強調 |
| アルペジオ・分散和音 | メロディと伴奏を同時に表現。複雑リズムの舞踊音楽で多用 |
3. リズム・ジャンルの特徴
- バルカン特有の 複雑な拍子(5/8, 7/8, 11/8など) に対応
- ダンス伴奏では右手の弓の強弱・速度を工夫してアクセントを付ける
- メロディ表現では左手の微妙な押弦角度や滑らせ方で音色を変化させる
⚡ 難易度
1. 初心者向けか?
- フレットなしで正確な音程を出す必要があるため、初心者にはやや難しい
- 小型・弦が少なめの教育用ミニモデルなら扱いやすく、練習用として最適
2. 難易度のポイント
| 項目 | 難易度の理由 |
|---|---|
| 音程精度 | フレットがないため、左手の正確な指の位置が必要 |
| 共鳴弦の活用 | 音量や倍音をコントロールするには経験が必要 |
| 複雑リズム対応 | バルカン舞踊音楽の不規則拍子に合わせるにはリズム感と弓の制御が必須 |
| 装飾音 | グリッサンドやスライド、アルペジオの精度で演奏表現が大きく変わる |
| 体力・持ち方 | 垂直構え・弓操作は長時間の演奏で体力・安定性が求められる |
有名な奏者
では ガドゥルカ(Gadulka)の有名な奏者 を紹介します。ブルガリアの民族音楽を中心に、国内外で活躍する演奏家がいます。
1. Георги (ゲオルギ) マネフ
- 国籍:ブルガリア
- ジャンル:ブルガリア民俗音楽
- 特徴:
- 伝統的なガドゥルカ奏者
- ホロやルチェニツァなどの民族舞踊伴奏で高い評価
- 左手の精密な装飾音と共鳴弦の豊かな響きを駆使
2. Божидар (ボジダル) Василев
- 国籍:ブルガリア
- ジャンル:民俗・フォーク
- 特徴:
- フェスティバルや民族音楽イベントで活躍
- 民族楽器の教育・伝承活動も行う
- 小型から大型ガドゥルカまで演奏可能
3. Светослав (スヴェトスラフ) Лефтеров
- 国籍:ブルガリア
- ジャンル:ブルガリア民俗音楽
- 特徴:
- 共鳴弦を活かした高度な装飾音・アルペジオ奏法が得意
- 国内外の民族音楽フェスで演奏
- 伝統演奏だけでなく、ワールドミュージック系のアレンジも手がける

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
民族楽器 ガドゥルカ(Gadulka)の 新品・中古の製品ラインナップと価格相場について、国内外の出品例をもとに整理します。製品数が少なく、情報も分散しているため「目安」としてお考えください。
🎯 製品ラインナップ例
実際に出品されているガドゥルカの例をいくつか挙げます。
それぞれ簡単に特徴をまとめると:
- Handmade Balkan Gadulka Fiddle (new – high‑quality):ブルガリア製ハンドメイド、新品、価格「€1,075(約¥160,000前後)」という出品あり。
- Bulgarian Gadulka for Orchestra (14‑strings):オーケストラ仕様14弦タイプ、新品オーダー製作品、価格「€330(約¥55,000程度)」という出品あり。
- Handmade Wooden Gadulka (1960s decorative):1960年代の装飾用/デコラティブ仕様、中古品として $33.75(約¥5,000〜6,000)という出品あり。
- Brand New Gadulka Instrument (general listing):新品・一般モデル、新品出品で C$558.84(約¥55,000〜70,000)という例。
- Antique Bulgarian Gadulka with Bow (used):アンティーク中古モデル、US$289(約¥45,000〜50,000)で出品。
- Vintage Bulgarian Gadulka string musical instrument (used):ヴィンテージ中古実用モデル、価格 €249.93(約¥40,000〜50,000)という例。
- Vintage Handmade Gadulka Folk Instrument (used):中古フォーク仕様、US$81.99(約¥14,000〜20,000)で落札された例。
- Handmade Balkan Gadulka Fiddle: Orchestral Folk Instrument (higher tier):手工ハンドメイド新品、高価格帯の出品例 $1,245(約¥180,000〜)も。
📊 価格相場(目安)
これらの出品例をもとに、価格帯を目安として整理します。
| グレード | 価格帯(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 入門〜低価格/中古フォーク仕様 | 約 ¥10,000 ~ ¥30,000 | 中古,小型仕様,仕様簡略モデル。例:US$81.99 ≒ ¥14,000。 eBay |
| 中級/新品一般モデル | 約 ¥50,000 ~ ¥80,000 | 新品一般モデル、14弦オーケストラ仕様新作等。例:€330 ≒ ¥55,000。 |
| 高級/ハンドメイド新品 | 約 ¥150,000 ~ ¥200,000以上 | ハンドメイド素材上質、弦数多・仕様充実モデル。例:€1,075 ≒ ¥160,000。 |
| アンティーク/ヴィンテージ中古 | 約 ¥40,000 ~ ¥100,000+ | 状態・年代・製作者により価格幅大。例:US$289 ≒ ¥45,000。 |
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