バウロンはアイルランド音楽のリズムを担当する打楽器です。伝統楽器で使われることが多く、ヨーロッパで知られている楽器の一つです。標準的なサイズは16インチほどで、低音がよく響く打楽器として知られています。近年では大きさも多様化してきており25cm から65cmまで様々なものがあり、様々な用途で使われるようになってきています。基本的に撥を鉛筆のように持ち、手首の回転によって打ち付けることで鳴らす楽器です。
起源と歴史
バウロン(bodhran)はアイルランドで生まれました。北欧のミュージックでは管楽器とともに演奏されることが多いです。
■ 1. 起源は明確ではない(複数説が存在)
バウロンのルーツは文献が少なく、
専門家の間でも 「いつ・どこで生まれたか」確定されていません。
ただし、研究では以下のような複数の起源説が指摘されています。
● 起源説①:ケルト文化における古代フレームドラム説
- ケルト民族は古代よりフレームドラム(枠太鼓)を使用していたとされる
- その系譜の末にバウロンが現在の形に発展したという説
- 具体的な実物遺物は少ないが、風習と楽器構造から有力視される
● 起源説②:ヨーロッパ広域のフレームドラムからの発展説
- 中東・地中海・バルカンのフレームドラムと同系統の楽器が、
交易・移民・宗教ルートを通って西へ伝わり、アイルランドに定着したと見る説 - アイルランドの民俗文化は他地域と接点が多く、歴史的にも成立し得る
● 起源説③:農具(ふるい)が転用されたという説
- 農作業で使う「ふるい(sieve)」の構造がバウロンと似ているため、
収穫祭・祝い事で叩いて音を出したものが楽器化したという民俗説 - 「bodhrán」という語が「鈍い音・低い音」を意味する bodhar に由来すると考えられている
■ 2. 中世〜近世:民俗行事での太鼓として使用
- 中世・近世のアイルランドでは、
バウロンに近い「片面太鼓」が農村の行事・祝祭で使われていた - 特にクリスマス前の “Wren Boys”(レン・ボーイズ)という風習で、
子どもたちが太鼓を叩きながら家々を回る伝統が知られている
→ ただしこの時代も「正式な楽器」というより 生活文化の道具 に近かった。
■ 3. 19世紀末〜20世紀初頭:一般民謡の伴奏として使用される
- アイリッシュダンス音楽のリズムを支えるため、
バウロンが徐々に伴奏楽器として使われ始める - しかし当時の主役はフィドルやフルート、ティンホイッスルだったため、
バウロンはまだ“補助的存在”
■ 4. 1960年代:バウロンが「正式なアイリッシュ楽器」として認知される
ここが歴史の 最重要ポイント。
● The Chieftains(ザ・チーフタンズ)の登場
- Paddy Moloney が率いる名門バンド “The Chieftains” が
1960年代以降の活動でバウロンを積極的に採用 - Seán Ó Riada(ショーン・オリーダ) が
バウロンを現代アイルランド音楽の正式楽器として再定義した - この時代に
- 演奏技術の体系化
- 太鼓としての役割強化
が進んだ
→ 現代のバウロン奏法の基礎は 60年代以降に確立 したもの
■ 5. 1980〜2000年代:モダン奏法の確立
- Johnny McDonagh
- John Joe Kelly
- Rónán Ó Snodaigh
などの名手が登場し、
高速リール・複雑なフィル・左右分離打法・音程操作などが発展。

特徴と構造、サイズ
以下に、バウロン(Bodhrán/ボウロン)の「特徴・構造・サイズ」を体系的に分かりやすくまとめます。
■ 1. バウロンの主な特徴
🟢 ① 片面にだけ皮が張られたフレームドラム
- 裏側は完全に開いている
- そのため 左手を皮の裏に入れて直接触れる → 音色を自在に変化
- 世界のフレームドラムの中でもこの「左手コントロール」の文化が特に発達
🟢 ② 山羊皮(ゴートスキン)の柔らかい音色
- 伝統的に ゴートスキン(山羊皮)
- 柔らかく暖かい音
- 湿度に敏感
- 深みのある低音〜パリッとした高音まで出せる
※最近はカンガルー皮/合皮モデルも増加。
🟢 ③ ダイナミクス(pp〜ff)の幅が広い
- 右手のティッパーの角度・強さ
- 左手の触れ方
次第で、
繊細なささやき声のような弱音~強烈なアタックまで表現可能。
🟢 ④ リズムだけでなく「メロディ的」表現も可能
左手で皮の張りを変えると
- ピッチ(音程)
- オーバートーン(倍音)
が変化し、旋律の補助のような効果が出せる。
🟢 ⑤ シンプルだが奥深い構造と奏法
- 叩くだけの太鼓ではなく
「右手(リズム)+左手(音色)」の両方を使う独特の楽器
となっている。
■ 2. 構造(パーツごとの解説)
● ① シェル(枠・胴体)
- 木製の円形フレーム
- 素材:アッシュ、メイプル、ビーチ、バーチ、チェリーなど
- 表面はオイルフィニッシュやステインで仕上げられる
クロスバー(支え木)
- 伝統的には 内側にクロスバーあり(手を支えやすい)
- 現代は クロスバーなしが人気(音色の自由度が高い)
● ② ヘッド(皮)
- ゴートスキン(山羊皮) が最もスタンダード
- たたく場所とテンションで音が大きく変わる
- 厚み:
- 薄い → 明るい音、高音が出やすい
- 厚い → 深い低音、パワフル
● ③ チューニング機構
現代の多くは チューナブル構造(可調整)。
- シェルの内側にネジがあり、レンチで皮の張りを調節
- ローレンチチューニング、特許構造のハイテク機などブランドにより異なる
※ 伝統的なノンチューナブルは張り調整なし。湿度により自然に変化。
● ④ ティッパー(バチ)
- 右手に持つ棒
- 名前のバリエーション:stroke stick, cipín, tipper
- 素材:木(ビーチ、メイプル)
- 形状:T字型、細長型、ダブルヘッドなど多数
※ ティッパーの形状は音色やスピードに大きく影響。
● ⑤ 左手のコントロールスペース
- 裏側に手を入れて
- 圧力
- 位置
- 手の形
で音を変える
→ バウロンの最重要要素
■ 3. バウロンのサイズ(標準と特徴)
| サイズ | 特徴 |
|---|---|
| 大径:40〜46cm(一般的) | 豊かな低音。ダンス曲で迫力あり。 |
| 中径:38〜40cm | バランス型。初心者にも扱いやすい。 |
| 小径:35〜38cm | 小柄な日本人に人気。高音寄りで軽い。 |
深さ(シェルの高さ)
- 10〜15cm が一般的
- 深い → 低音が豊か
- 浅い → 軽く扱いやすい
種類についてバリエーション
■ 1. チューニング方式による分類
① ノンチューナブル(伝統型)
- 皮の張りを固定しており、ネジで調整できない
- 湿度や気温で自然に音が変化する
- 伝統的な民俗音楽で使用
- メリット:構造がシンプルで軽量
- デメリット:音の安定性が低く、コントロールが難しい
② チューナブル(可調整型)
- 内部のネジやボルトで皮の張りを調整可能
- 現代のスタジオ・ライブ向き
- メリット:音程・音色を安定させやすい
- デメリット:構造が複雑で重量がやや増す
■ 2. シェル(胴)形状による分類
① 標準フラット型
- 直径40〜46cm、深さ10〜12cm
- 一般的でバランスが良い
- 初心者からプロまで幅広く使用
② 深胴型(Deep Shell)
- 深さ13〜15cm
- 低音が豊かで迫力がある
- リールやジグの伴奏に向く
③ 小型型(Mini Bodhrán)
- 直径35〜38cm、軽量
- 子どもや小柄な奏者向き
- 高音寄りで軽快なリズム表現が可能
■ 3. クロスバーの有無による分類
- クロスバーあり
- 手の支えになるため初心者向き
- 叩きやすく、持ちやすい
- クロスバーなし
- 左手のコントロールが自由
- 音色変化やピッチ調整がしやすい(プロ向け)
■ 4. ヘッド(皮)の種類による分類
- 天然山羊皮(ゴートスキン):伝統的、柔らかく深みのある音色
- 合成皮/カンガルー皮/プラスチック系:湿度や温度変化に強い、メンテナンス簡単
- 厚みの違い:
- 薄皮 → 明るくシャープな音
- 厚皮 → 深みと低音重視

バウロンの曲
バウロンは基本的にケルト音楽の世界で使用される楽器として知られています。
奏法、難易度
🥁 バウロンの奏法
1. 基本の持ち方
- 左手
- 太鼓裏に手を入れ、皮を支えたり圧力をかける
- 音色や音程をコントロールする「音作りの要」
- 右手(ティッパー)
- 棒を持ち、ダウンストローク/アップストロークで叩く
- 叩く位置・角度・速度で音色が変化
左手と右手の連動が、バウロン奏法の核心
2. 基本リズム
◎ アイリッシュ音楽での典型リズム
- ジグ(6/8拍子):DUB・DUB・DUBのアクセント
- リール(4/4拍子):均等な16分音符でドライブ感を出す
- ホーンパイプ:跳ねるリズムで軽快なアクセント
◎ 打ち方のパターン
- Single Stroke(片打ち):基本形
- Double Stroke(連打):速いリズムの補助
- Rolls(ロール):連続的な16分音符を滑らかに表現
- Flip / Tap(左手ミュート併用):音色変化
3. 音色の作り方(左手テクニック)
- 圧力でピッチ調整
- 手のひら/指で皮に圧をかけると音程が上下
- 位置の違いで音色変化
- 皮の中心 → 低音
- 端 → 高音
- 手の形・指の組み方で倍音をコントロール
- 弾くように皮を軽く押すだけで「メロディ的な音」を出せる
4. ティッパーの使い方
- 角度:水平よりやや斜めにすると音が鋭くなる
- 速度:遅め → 柔らかい音、速め → シャープでダイナミック
- 両面ティッパー使用:高速リール・複雑な装飾音に有効
🥁 バウロンの難易度
◎ 初心者向け
- リズムの基本パターン(ジグ・リール)を覚えるだけなら簡単
- ティッパーで叩けばすぐに音が出る
◎ 中級
- 左手で音色を変えたり、ロールやアクセントを入れる
- リズムの速度や複雑さに対応する必要がある
◎ 上級・プロ
- 高速リールで正確な16分音符を叩く
- 左手でピッチや倍音をコントロールし、旋律を補助
- 右手・左手を同時に高度に操作する技術が要求される
有名な奏者
バウロン(Bodhrán)の世界には、アイリッシュ音楽の発展に貢献した名手が多数います。以下に歴史的・現代的な有名奏者をまとめます。
◎ ジョニー・マクドナー(Johnny McDonagh)
- 出身:アイルランド(スライゴー)
- 特徴:伝統奏法を守りつつ、リズム表現の幅を広げた
- 所属:De Dannan、Moving Hearts など
- 特徴的なリズム感と装飾音の使い方で評価
◎ ショーン・オリーダ(Seán Ó Riada)
- 音楽学者・作曲家
- 1960年代に バウロンを現代アイリッシュ音楽の正式楽器として確立
- 教育・演奏を通じてバウロン奏法を体系化
◎ ジョン・ジョー・ケリー(John Joe Kelly)
- 世界で最もテクニカルなバウロン奏者の一人
- 高速リール・複雑な16分音符・左右の手の独立操作が特徴
- ソロアルバムやライブで幅広く活躍
◎ ローナン・オスノダイ(Rónán Ó Snodaigh)
- グループ:Kíla
- モダン奏法を多用し、左手による音色変化が非常に巧み
- 現代的アレンジの民族音楽で影響力大
◎ シェイマス・オキャシディ(Seamus O’Kane)
- 名工でもあり、バウロンの製作・改良も手がける
- プロの演奏家としても活躍
- チューナブル・深胴型バウロンの普及に寄与

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
バウロン(Bodhrán/ボウロン)をこれから購入する方向けに、新品・中古の製品ラインナップと価格相場を整理します。
※為替・送料・関税・在庫状況によって変動しますので「目安」としてお読みください。
🔍 製品ラインナップ(新品モデルから)
以下、購入候補として参考になるモデルをいくつか紹介します:
各モデルについて簡単に補足します:
- MEINL Sonic Energy 14″ Bodhrán:14インチサイズの比較的扱いやすいモデル。価格も手頃(国内販売で約 ¥32,560)です。
- MEINL FD14IBO Bodhrán 14″:同じく14インチ。仕様や素材が若干異なるモデル。価格は約 ¥31,680。
- MEINL Sonic Energy 18″ Bodhrán:18インチの大型サイズモデル。低音域が豊かで、価格も高め(国内で約 ¥36,960)。
- MEINL FD18BO Bodhrán 18″:18インチモデル別仕様。素材や仕様の違いで音色・価格が変わります(国内で約 ¥36,560)。
- 14″ Irish Bodhran Drum Package:アクセサリー(ティッパー・バッグなど)付きのパッケージモデル。価格が高め(例 ¥79,284)ですが、これから始めるならお得な場合あり。
- Pearl PBT‑60 Bodhrán/Frame Drum:フレームドラム系の低価格代替モデル。必ずしも高度な仕様ではないが、入門用として十分。
📊 価格相場(新品・中古)まとめ
新品の目安
- 入門〜初心者向け:US $70〜150/¥10,000〜25,000あたり。例:15″〜18″パックが US $74.95〜US $104.45。
- 中級・チューナブル仕様・ハンドメイド系:¥30,000〜¥50,000+。例:16″・18″のチューナブルモデルが ¥30,300〜¥93,888
- プロ仕様・限定モデル:さらに上、¥50,000〜¥100,000以上も。例えばオーストラリアで 16″チューナブルモデルが AUD $495(約 ¥50,000〜)という例あり。
中古・ヴィンテージの目安
- 基本入門中古:€50〜€100/US $70〜$120。例:eBayで中古12″〜18″が US $69.99 等。
- 良質ブランド・ハンドメイド品・ヴィンテージ:€175〜€300+/¥30,000〜50,000+。例:アイルランドの掲載で €175。
- 極上モデル・限定工房・カスタム仕様:さらに上乗せ。その場合、¥100,000前後/US $300+以上になることもあります。
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