トロンボーンは金管楽器の中で、唯一スライドを滑らせて演奏する種類の楽器です。オーケストラで必ず出てくる楽器の一つで、クラシック音楽の定番と言える楽器でしょう。現代ではオーケストラからジャズ、ポップスまで幅広いジャンルで演奏される楽器となっており、より一般化してきています。トロンボーンの歴史は古く、500年くらい前からはあまり形状も変わっていないといわれる楽器でもあります。
起源と歴史
ヨーロッパでこの楽器は生まれました。15世紀頃のヨーロッパが起源と言われており、現在ではマウスピースも入門用からハンドメイドモデルまで豊富なラインナップが揃っていますので魅力。グリッサンドなどの奏法が有名です。
起源
- トロンボーンは、15世紀後半〜16世紀初頭のヨーロッパで誕生した金管楽器です。
- 当初は「サックバット(Sackbut)」と呼ばれ、現代のトロンボーンの原型となる楽器でした。
- サックバットはルネサンス期の教会音楽や宮廷音楽で用いられ、スライドで音程を変える構造は当時から特徴的でした。
歴史的発展
- ルネサンス期(16世紀)
- サックバットとして登場。
- 教会音楽や宗教的合奏で用いられ、柔らかく穏やかな音色が重視されました。
- バロック期(17〜18世紀)
- オルガンや声楽との合奏で発展。
- バロックオーケストラに取り入れられ、トランペットやホルンと共演。
- 管の長さやベルの形が少しずつ現代型に近づく。
- 古典派〜ロマン派(18〜19世紀)
- ベルを大きくしたり管の材質を改良するなど、音量・表現力が増大。
- 軍楽隊やオーケストラに広く使用されるようになり、ソロ楽器としての活躍も。
- 19世紀後半〜20世紀
- 現代トロンボーンの形状が確立。
- ジャズ、吹奏楽、映画音楽など多彩なジャンルで使用。
- バス・トロンボーンやアルト・トロンボーンなど派生型も登場。
名称の由来
- イタリア語「tromba」(トランペット)+「-one」(大きいもの)で 「大きなトランペット」 の意。
- 英語圏では「trombone」と表記され、16世紀から現在まで呼称が定着。
ポイント
- トロンボーンはスライドで音程を変える独自構造を持つ、世界でも珍しい金管楽器。
- 教会音楽や宮廷音楽から始まり、オーケストラ、ジャズ、吹奏楽まで幅広く発展。
- 歴史的に、柔らかい音色から力強い低音まで、音楽の表現幅を拡大してきた楽器。
開発会社
現在世界では多数のトロンボーン製造メーカーが存在します。
| 社名 | 国 | 特徴 |
| YAMAHA | Japan | テナー、テナーバストロンボーンはもちろんのことバストロンボーンからアルトトロンボーンまで幅広いラインアップを誇るブランドです。 |
| Bach | United States | アメリカの金管楽器メーカー、創設者でトランペット奏者だったヴィンセント・バックがトロンボーンを製造し始めました。 |
| KING | United States | 細管テナートロンボーンは現在多くのJAZZプレイヤーに愛用され続けています。 |
| Courtois | Germany | 200年以上にわたり金管楽器を製造している伝統あるブランドです。 |
| C.G.CONN | United States | 100年以上にわたり金管楽器を製造している伝統あるブランドです。 |
| XO | Japan, Taiwan | 日本の管楽器メーカー株式会社グローバルが開発・プロデュースし、台湾の管楽器総合メーカー功学社で製造されているコラボレーションブランドです。 |
特徴と構造、サイズ
特徴
- スライドで音程を変える金管楽器
- 唇の振動で音を出す金管楽器の一種。
- 他の金管楽器(トランペットなど)がバルブで音程を変えるのに対し、スライドを伸縮させることで音程を調整する独自の仕組みを持つ。
- 幅広い音域と表現力
- 高音から低音まで幅広く演奏可能。
- 強弱・音色の変化をつけやすく、オーケストラ・吹奏楽・ジャズなど多様な音楽で活躍。
- 多彩な音色
- ベルの大きさやボア(管径)、材質により音の厚みや響きが変化。
- 軽やかで明るい音から、重厚で力強い低音まで対応。
構造
トロンボーンは大きく分けて次の部分で構成されています。
- マウスピース
- 唇を振動させて音を出す部分。
- リムの形やカップの深さで吹きやすさや音色が変わる。
- スライド(伸縮管)
- 内管と外管で構成され、伸ばすことで管の長さが変わり低い音が出る。
- 7段階程度のポジションで音程を変えるのが基本。
- スライドの操作速度・正確さが演奏技術の重要ポイント。
- ベル(管先端)
- 音を響かせる部分で、サイズが大きいほど低音が豊かで重厚な響きに。
- 材質は主に黄銅(ブラス)が多く、銀メッキやニッケルメッキで音色を調整することもある。
- チューニングスライド
- 管全体の長さを微調整して音程を整える部分。
- 演奏前や曲中の微調整に使用。
サイズ・形状
- テナートロンボーン(標準)
- 管の長さ:約2.7メートル(スライドを伸ばすと約3.2m程度)
- ベル直径:約123〜140mm
- ボア径:約12.7〜13.5mm(小ボアは初心者向き、ラージボアは音量重視)
- アルトトロンボーン
- 管は短く、ベル径は小さめ。高音域に特化。
- ベル直径:約110〜120mm
- バストロンボーン
- 管径・ベル径が大きく、低音域に特化。
- ベル直径:約140〜150mm以上、管全長もやや長い
- 重量
- テナー・アルト:3〜4kg程度
- バス:4〜5kg程度(ベルが大きく管が重い)
まとめ
- トロンボーンはスライドで音程を調整する金管楽器で、柔軟な表現力と幅広い音域が魅力。
- マウスピース、スライド、ベル、チューニングスライドの4要素で構成される。
- タイプ(テナー・アルト・バス)によってサイズ・音域・吹き心地が異なる。

全モデルのラインナップ
主なタイプとその例を挙げて、国内入手可能な代表モデルも含めます。
トロンボーンの主な種類(タイプ)
以下が一般的に分類されるトロンボーンのタイプです。
- アルト・トロンボーン(Alto Trombone) — 高めの音域、テナーより小型。
- テナー・トロンボーン(Tenor Trombone) — 最も一般的なタイプ。Bb調が多い。
- バス・トロンボーン(Bass Trombone) — 低音寄り。大きめのベル/ボア。
- コントラバス・トロンボーン(Contrabass Trombone) — さらに低域、特殊用途。
- ソプラノ/ソプラニーノ・トロンボーン(Soprano / Sopranino Trombone) — 高音寄り・珍しい。
- バルブ・トロンボーン(Valve Trombone) — スライドの代わりに(あるいは併用で)バルブを使うタイプ。
② 用途・レベル別のモデル区分
演奏者のレベルや用途に応じてモデルが変化します。たとえば「学生用(入門)」「中級」「プロ仕様(上級)」など。
- 学生用/入門モデル:小ボア、軽量、価格を抑えたモデル。
- 中級/ステップアップモデル:ボアがやや大きめ、ベル材質や装備(トリガー付きなど)も向上。
- プロ仕様/カスタムモデル:大ボア、ハンドハンマードベル、特注仕様など。
③ 代表的なモデル例(日本国内で入手できるもの)
- YAMAHA YSL‑456G:YAMAHAのプロ向けテナーモデル。
- YAMAHA YSL‑350C:定番テナーモデル、学生~中級者向け。
- YAMAHA YBL‑620G (Bass):YAMAHAのバストロンボーン(低音寄りモデル)。
- J.Michael TB‑650L:中級バストロンボーンモデル。
- BACH Model 12GL (中古):中古の高級テナーモデル例。
- Beginner Trombone Brass Instrument:格安入門モデル。
トロンボーンの人気モデル
Sackbut
トロンボーンの祖先といわれる種類の古楽器です。現代のトロンボーンよりも、全体的に小さく軽いのが特徴です。
Alto trombone
明るく軽やかな音が特徴で、一般的なテナートロンボーンよりも小ぶりで、管の基音は『E♭』です。
Tenor trombone
最も一般的な種類のトロンボーンで、基音は『B♭』です。テナートロンボーンは、シャープで明るい音色が特徴です。
Tenor bass trombone
テナートロンボーンにバルブF管を追加したのが、テナーバストロンボーンです。
Bass trombone
バストロンボーンは、テナーバストロンボーンの管を太くし、バルブを2本(F管・G♭管)追加した種類のトロンボーンです。
Valve trombone
スライドではなく、ピストンやロータリー式のバルブ操作することで、音域を変える種類のトロンボーンです。
奏法、難易度
トロンボーンの奏法と難易度について詳しくまとめます。
1. 基本奏法
① 音の出し方
- 唇をマウスピースに当て、唇の振動で空気柱を振動させて音を出す。
- 唇の張り具合(アンブシュア)や息の強さで高さ・音色をコントロール。
- 音階はスライドの位置と唇の振動で決定。
- 7段階のスライドポジションで基音を変える。
- 高音は唇を締め、低音は唇をゆるめる。
② スライド操作
- スライドを伸ばすと低い音、縮めると高い音が出る。
- 音程の正確さはスライドの位置精度に依存。
- 早いパッセージではスライドの素早い移動が求められる。
③ 倍音・音色のコントロール
- 各ポジションで**倍音列(オーバートーン)**を使って複数の音を演奏可能。
- 音色を変化させることで、柔らかい音から力強い響きまで表現可能。
④ アタッチメントの使用
- バストロンボーンやテナーの一部には**Fトリガー(スライド延長)**が付属。
- トリガーを使うと低音域が滑らかに演奏可能。
- 高度な奏法ではスライドとトリガーの併用で正確な音程や速いパッセージに対応。
2. 難易度
初級
- 音を出すだけなら比較的容易。
- 簡単な音階練習や長音の持続練習が中心。
- スライド位置の正確さが初心者の課題。
中級
- スライドの速い移動やオクターブ跳躍を含むパッセージに対応。
- 倍音列の活用、音色のコントロールが必要。
- 吹奏楽・ジャズ・室内楽で表現力を求められるレベル。
上級
- 高音・低音・長音・速いパッセージを自在に操る。
- 音色、ビブラート、ダイナミクスの微細な表現を同時に管理。
- ジャズ・ソロ・オーケストラで高度なテクニックや即興演奏に対応。
- スライド操作の精度や息遣いの制御が要求される。
3. 練習のポイント
- 長音練習:音の安定性・息の持続力を養う。
- スライドポジション練習:正確な音程を身につける。
- 倍音列練習:唇の張り具合で高音域の演奏力向上。
- 速いパッセージ練習:スライド操作の俊敏性を養う。
- 音色の変化練習:柔らかい音・強い音・ビブラートの練習。

有名な奏者
トロンボーンの有名な奏者を、ジャンル別にまとめます。クラシック、ジャズ、ポップ/現代音楽などで活躍する奏者がいます。
1. クラシック・オーケストラ系
Joseph Alessi(ジョセフ・アレッシ)
- ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団首席トロンボーン奏者。
- 卓越した技術と表現力で世界的に評価。
- ソロ・レコーディング多数。
Christian Lindberg(クリスチャン・リンドバーグ)
- スウェーデン出身のテナートロンボーン奏者。
- クラシックから現代音楽まで幅広く演奏。
- トロンボーンのソロ楽器としての可能性を大きく広げたパイオニア。
Michel Becquet(ミシェル・ベケ)
- フランス出身の名トロンボーン奏者。
- フランス・トロンボーンの伝統的スタイルを代表。
- 教育者としても世界的に影響力が大きい。
2. ジャズ/ポピュラー系
J.J. Johnson(ジェイ・ジェイ・ジョンソン)
- ジャズ・トロンボーンの巨匠。
- モダンジャズでの演奏スタイルを確立。
- クールジャズ/ビバップのリーダー的存在。
Slide Hampton(スライド・ハンプトン)
- ジャズ・アレンジャーとしても著名。
- バップやビッグバンドで独自のトロンボーン奏法を確立。
Wycliffe Gordon(ウィクリフ・ゴードン)
- 現代ジャズ・トロンボーン奏者。
- ニューオリンズジャズやスウィングで活躍。
- 感情豊かな表現力とスイング感が特徴。
3. その他・現代音楽/フュージョン系
Christian Senn(クリスチャン・セン)
- スイス出身。クラシックだけでなく現代音楽、ジャズとの融合演奏。
- エクスペリメンタルな奏法で知られる。
Dennis Edelbrock(デニス・エデルブロック)
- フュージョン、ビッグバンド、吹奏楽で活躍。
- 教育者としても有名で、トロンボーン教育に貢献。
新品と中古の製品ラインナップと価格相場
トロンボーンの新品・中古モデルのラインナップと価格相場について、国内で入手可能な代表モデルを挙げつつ、価格傾向も含めてまとめます。初心者~中級~上級まで幅がありますので、用途や予算に応じた選び方の参考にもなればと思います。
🎹 代表的なモデル(新品)
- Shires Colin Williams Custom Tenor‑Bass Trombone:三木楽器200周年記念モデルという非常に高級仕様モデル。価格は約 ¥1,141,800。
- Shires Colin Williams Custom Tenor‑Bass Trombone (GB):さらに高額仕様。価格約 ¥1,163,800。
- YAMAHA YBL‑835GD Bass Trombone Custom Xeno:YAMAHAの上級バス・トロンボーン仕様。価格約 ¥816,750。
- YAMAHA YSL‑881 Xeno Tenor Trombone:テナートロンボーンのプロ仕様。価格約 ¥567,764。
- YAMAHA YSL‑823GD Tenor Trombone:テナーモデルでやや上級。価格約 ¥559,350。
- YAMAHA YBL‑835D Bass Trombone Custom Xeno:バスモデルで太管仕様。価格約 ¥790,900。
- “中級テナーモデル”として、例えば YAMAHA 「YSL‑456G」などがあり、価格は約 ¥183,800 というデータあり。
- “入門テナーモデル”としては安価なモデル(価格が10万円台という情報も)があります。例:Amazonで「トロンボーン」で検索すると約 ¥15,180 のモデルも出ています。
新品価格の大まかな価格帯目安
- 入門モデル:¥10万〜20万円程度
- 中級モデル:¥20万〜50万円程度
- 上級モデル/プロ仕様/バス・テナーバス:¥50万円〜100万円以上
- 特注・カスタム仕様/限定モデル:¥100万円以上というケースあり(例:Shiresモデル上記)
🔁 中古・セカンドハンド市場の価格相場
中古市場ではモデル・ブランド・状態によって価格幅が広いですが、国内の楽器店での例が参考になります。
- 中古として、例えば YAMAHA 「YSL‑354(テナートロンボーン)」が ¥73,440 という表示あり。
- 他にも、外国ブランド上級モデル(例: BACH/テナーバス仕様)で ¥210,000〜¥249,600 程度の例あり。
- 中古買取価格としても、例えば YAMAHA YBL‑830(バストロンボーン)で ¥170,000 程度というリストあり。
中古価格の目安
- 入門〜学生用モデル(中古):数万円〜10万円前後が目安。
- 中級仕様・ブランドあり中古:10万円〜30万円程度。
- 上級ブランド/バス仕様/特注仕様中古:30万円〜50万円以上またはそれ以上というケースあり。
- 状態・ブランド・仕様(ボア/ベル径/付属品/トリガー装備)で価格が大きく変動します。
✅ 考慮すべきポイント・比較のヒント
- 「新品 vs 中古」では、新品は安心・メーカー保証・最新仕様ですが価格が高くなります。中古ではコストを抑えられますが状態・メンテナンス履歴を必ず確認することが大切です。
- 入門者なら中古の「多少使われているが良好な状態」のモデルを選ぶとコストパフォーマンスが高いです。
- 上級を目指すなら、ベル径・ボア・トリガー仕様(バストロンボーンにはFトリガー/テナーバス仕様など)が重要。新品で最新仕様を選ぶのが安心です。
- 中古を選ぶ際には「スライドの動き」「管の歪み・凹み・修理歴」「ベルの仕上げ・素材」「付属ケース・マウスピース」などをチェック。
- 楽器店の「買取・下取り価格」も参考にできます。例えば買取価格が高めに出るモデルは流通需要が高いという指標になります。
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