クルムホルンは古い木管楽器のひとつでヨーロッパで使われている楽器です。しかしとてもマニアックな楽器であることからあまり知られていません。ルネッサンス時代に最も一般的に使用されていました。一時忘れ去られてしまっていた楽器でしたが、20世紀後半からは再び注目が集まるようになり、ヨーロッパの伝統音楽や古楽などで使用されるようになりました。非常に変わった形をしている楽器なのです。
起源と歴史
ヨーロッパでこの楽器は生まれました。
1. 起源
- 発祥時期:おおよそ15世紀頃
- 発祥地:ドイツまたはフランドル地方(現在のベルギー・オランダ周辺)
- 名称の由来:「Krumm」=曲がった、Horn=角/ホルン
- 曲がった形状の管体に由来
- 初期の文献には「Krummpfeyffen(曲がった笛)」として登場
2. ルネサンス期(15〜17世紀)
- 宮廷や宗教儀式、屋外演奏、アンサンブル(コンソート)に広く用いられた
- 複数サイズ(ソプラノ、アルト、テナー、バス)によるクルムホルン・コンソートが一般的
- 絵画にも登場:例)イタリアのロレンツォ・コスタ作「死の勝利」(1488〜1490年)に演奏者が描かれる
3. 17〜18世紀
- バロック音楽の発展に伴い、リコーダーやオーボエなど新しい木管楽器に取って代わられ、使用は徐々に減少
- 主に宮廷や古典的合奏の中での装飾的役割として残る
4. 現代における復興
- 20世紀中盤、古楽復興運動の中で再評価される
- 現代の古楽団体や演奏家がルネサンス音楽の演奏で使用
- 復刻モデルや現代製作のクルムホルンが専門楽器店で入手可能
特徴と構造、サイズ
🎵 クルムホルンの特徴
1. 音色
- 独特の鼻にかかったような丸い音色
- 音量は控えめで、柔らかく、ややぶ厚い響き
- 単独でのソロより、**アンサンブル(コンソート)**で使用されることが多い
- ルネサンス音楽の舞曲や室内演奏に最適
2. 演奏の特徴
- 音程はやや固定的で、微妙なビブラートや強弱の変化は困難
- 曲線的な管体とキャップ付きリードにより、安定した音を出すことができる
- 指穴の開閉で音程を変える単純な運指体系
🛠 構造
| 部位 | 特徴 |
|---|---|
| 管体 | J字型または曲がった形の木製パイプ(曲がった「角」の形状) |
| 材質 | 木材(ボックスウッド、ヤナギ、メープルなど) |
| リード | キャップ付き二重リード(内蔵されており、直接触れない) |
| 指穴 | 6〜7個の穴で音程を調整 |
| マウスピース(キャップ) | リードを保護し、唇に触れず音を出す |
| 音域 | おおよそ1オクターブ半程度(種類・サイズにより異なる) |
📏 サイズ
クルムホルンは音域・用途に応じてサイズが異なることが特徴です。主な種類とサイズ目安:
| 種類 | 音域 | 長さ(目安) | 用途 |
|---|---|---|---|
| ソプラノ | g’〜d’’ | 約25〜30 cm | メロディ |
| アルト | c’〜g’’ | 約35〜40 cm | メロディ・中声部 |
| テナー | F〜c’’ | 約45〜50 cm | 中声部・伴奏 |
| バス | C〜g’ | 約60〜70 cm | 低音・伴奏 |
- クルムホルンは曲がった管体によりコンパクト化されており、管体の長さが実際の音程より短くても音が出せる
種類について詳細
「クルムホルン」の種類と詳細について整理します。クルムホルンは主にサイズ・音域によって分類され、アンサンブル(コンソート)で使われます。
1. サイズ・音域による分類
クルムホルンは、ソプラノ・アルト・テナー・バスの4種類が基本で、音域と管の長さによって区別されます。
| 種類 | 音域 | 管の長さ(目安) | 役割 |
|---|---|---|---|
| ソプラノ | g’〜d’’ | 約25〜30 cm | 主旋律(高音) |
| アルト | c’〜g’’ | 約35〜40 cm | メロディ・中声部 |
| テナー | F〜c’’ | 約45〜50 cm | 中声部・伴奏 |
| バス | C〜g’ | 約60〜70 cm | 低音・伴奏 |
これらを組み合わせて**クルムホルン・コンソート(合奏)**を作ることが一般的です。
2. 形状・構造による分類
- J字型(標準形)
- 管体が曲がった典型的形状
- 音の安定性が高く、最も一般的
- 直管型(稀少)
- 初期または特注モデル
- 曲がった管よりも管体が長く、取り扱いがやや大きい
3. 音色・用途によるバリエーション
- コンソート用
- ソプラノ〜バスまで揃えて、アンサンブルで演奏
- ソロ用
- ソプラノまたはアルト単体での演奏向き
- 音量は控えめで、独奏では補助楽器を伴うことが多い
- 教育・入門用(現代復刻)
- 取り扱いが簡単な小型ソプラノ型
- 学校や古楽入門者向け

クルムホルンの楽曲
Soprano crumhorn
Alto crumhorn
Tenor crumhorn
Bass crumhorn
Contrabass crumhorn
奏法、難易度
🎵 クルムホルンの奏法
1. 基本奏法
- 指穴を開閉して音程を変える
- ソプラノ・アルト・テナー・バスそれぞれ6〜7個の穴を指で押さえる
- リードはキャップ内蔵のため、唇に触れずに音を出す
- 唇の強弱で音量を変えることは基本的にできない
- 音量は控えめで、アンサンブル演奏向き
- 室内楽やルネサンス舞曲でのコンソート演奏が中心
2. 装飾・表現奏法
- トリルやモルデント:装飾音を加えることで旋律に華やかさを出す
- タンギング:息の出し方で音の開始を調整
- アーティキュレーション:音を短く切る/滑らかにするなどの表現
- コンソート演奏では、音のタイミングやリズムを揃えることが重要
3. 難易度
| レベル | 内容 | 難易度 |
|---|---|---|
| 初級 | 指穴の基本運指、単音演奏、簡単な旋律 | ★☆☆☆☆ |
| 中級 | 装飾音(トリル・モルデント)、簡単な二重音・アンサンブル | ★★☆☆☆ |
| 上級 | 高度な装飾音・複雑なリズム、コンソートでの正確なハーモニー合わせ | ★★★★☆ |
ポイント
- 初心者でも単音を鳴らすことは容易
- 音色や強弱の表現は限定的で、リズムや装飾で表現力を出す必要がある
- 上級者向け曲では、複数サイズのクルムホルンとのアンサンブルや装飾音を正確に演奏する能力が求められる
有名な奏者
1. 歴史的奏者
- クルムホルンは主にルネサンス期(15〜17世紀)に使われていたため、個別の奏者名はほとんど記録されていません。
- 当時は宮廷音楽家や宗教儀式の楽団員として使用されることが多く、名前よりも「職業的役割」が重視されました。
- 絵画や文献では、クルムホルン演奏者の描写があるのみです(例:イタリア・ロレンツォ・コスタ作「死の勝利」1488〜1490年)。
2. 現代の専門奏者
20世紀の古楽復興運動以降、クルムホルン専門家や演奏家が活動しています。
- マルク・ペラント(Marc Peñalver)
- フランス・スペインの古楽奏者
- クルムホルンを含むルネサンス木管楽器の演奏で知られる
- ロバート・ワード(Robert Ward)
- イギリスの古楽奏者
- クルムホルン・コンソートでの演奏や録音に貢献
- ヨナス・アンダーソン(Jonas Andersson)
- 北欧古楽団体で活躍
- 複数サイズのクルムホルンを使用したアンサンブル演奏に精通

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
「クルムホルン(Crumhorn/Krummhorn)の 新品・中古の製品ラインナップと価格相場 を整理します。ただしこの楽器は現代流通量が少なく、価格・モデルの掲載数とも限定的である点ご留意ください。
🎯 製品ラインナップの例
以下はいくつかの参考となる出品・商品情報です。楽器本体の新品・中古が少ないため、参考値としてご覧ください。
クルムホルン(木管楽器本体):木管楽器本体として販売されている例。価格は数千円〜数万円帯のものもあります。例えば、ある中古セット(ソプラノ〜バス4本セット)が「A$5,541.59(オーストラリアドル、約日本円で数十万円)」という例あり。
クルムホルン(ソフト音源/デジタル版):実楽器ではなく、サンプル音源やデジタル音源製品としての「クルムホルン」音色モデル。価格は US $39(約4〜5千円)など。
📊 価格相場の目安
新品本体
- 専門古楽器店の新品製作モデルとして、「Bass Crumhorn」が英ポンド/ドルでリストされており、例として “Bass Crumhorn … £1,795” という中古・再調整済み価格の例あり。
- 一般的には「新品」で手軽に出回るモデルは少なく、数十千円〜数十万円という価格帯が予想されますが、希少モデル・手工品となるとさらに高額になる可能性があります。
- “予算的に50,000 円未満”を目安に探しているという投稿もあります。
中古本体
- 上記の中古セット例:4本セットが「A$5,541.59」という価格。
- 中古楽器として「十万円〜数十万円」レベルの価格帯も確認できます。
- 状態、付属ケース、調整・リードの有無、製作年・メーカーなどで価格が大きく変動します。
✅ 購入時のチェックポイント
- サイズ(ソプラノ・アルト・テナー・バス)を確認し、自分の演奏用途(ソロかアンサンブルか)を考える。
- リードの状態(交換可能か、補修歴)を確認。クルムホルンはリード専用調整が必要な場合があります。
- 中古の場合、管体のひび割れ・音孔の状態・マウスピース/キャップの状態をチェック。
- 新品・中古問わず、製作工房・メーカーの信頼性・アフターサービスを確認。クルムホルン専門の製作家は少ないという報告もあります。
- 海外輸入になる場合、送料・関税・リード交換コストも念頭に置く。
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