ティリンカは原始的ともいえる形状をした笛です。ルーマニアの伝統楽器であり、直径1cm~2cmくらい、長さは30cm~50cmほどで筒状になっている笛です。ルーマニアでは民俗音楽でよく使われる楽器の一つ。ウクライナ語では、テレンカと呼ばれており、地域によって独自の進化を遂げている楽器なのです。ルーマニアだけでなく、ウクライナやモルドバなどでも使用されている東ヨーロッパの独自楽器です。
起源と歴史
ルーマニアでこの楽器は生まれました。これら伝統の楽器は欧州では有名で形も独特。ハンガリーではテレンカなどとも呼んでいます。百科事典のページでも出てくる有名な民族楽器です。元来「吹き鳴らすもの」を意味します。ヨーロッパのブコヴィナ地方ではこのティリンカやコブザなどの楽器が用いられることが多いです。リズムは独特でジプシーも使う楽器です。
1. 起源
- 地域的起源
ティリンカは、東ヨーロッパの山岳地帯、特にルーマニア北部(ブコヴィナ地方)、ウクライナ、モルドバで伝承されてきた民族楽器です。 - 民族的背景
山岳地帯の**牧畜民(羊飼い・山羊飼い)**が、野外での生活の中で使っていた簡易管楽器とされます。 - 名称の由来
- ルーマニア語: tilincă
- ウクライナ語: Тилинка (Tilynka)
- ハンガリー語: tilinkó
名前は音の響きや吹く際の音色に由来するとされる説があります。
2. 歴史的発展
- 原始的な笛としての誕生
- 指孔のない単純な管で、息と唇の操作で音を出す構造は古代から存在。
- 山岳地帯で自然素材(竹、葦、木)を用いて自作され、生活音楽として使用。
- 牧畜文化との結びつき
- 牧草地や山の間で羊や山羊を呼び寄せる際、笛の音を利用。
- 音色は遠くまで届く倍音的な響きを持つため、広い野外で効果的。
- 民俗音楽への取り入れ
- 村祭りや伝統行事で使用されることもあり、地域の民俗音楽の一部に。
- ルーマニア北部やカルパティア山地周辺では、他の民族楽器(ツィンバル、フルート、ドゥルムリなど)と一緒に演奏される記録がある。
- ハンガリー語圏への伝播
- ハンガリー、スロバキア、モルドバのカルパティア盆地周辺でも、類似の倍音笛として知られる。
- 近代の民俗音楽研究や民族楽器の文献では、ハンガリー語で「tilinkó」として紹介されることがある。
- ただし、ハンガリー国内の独自発祥ではなく、文化圏をまたいだ伝播・交流の結果と考えられる。
- 近代以降
- 民族楽器としての価値が認められ、民族音楽保存・研究の対象に。
- 現在は、民俗音楽イベントや民族楽器のコレクション、音楽教育の一環で紹介されることが多い。
特徴と構造、サイズ
ティリンカ(Tilinca)の特徴と構造、サイズについて詳しく整理します。
1. 基本的な構造
- タイプ:単純管の倍音笛(指孔なしの縦笛タイプ)
- 形状:まっすぐな筒状で、両端が開いている場合と片方が閉じている場合がある
- 素材:
- 伝統的には竹、葦、柳、ボダイジュ(菩提樹)の木材
- 現代では加工しやすい木材やプラスチックで製作されることもある
- 吹き口:
- 片端に唇を当てて息を吹き込む
- 吹き口の形状によって音色・音量が変わる
- 指孔:なし
- 音程は唇・息・管の開口部の操作で変化
- 倍音を利用して高低の音を出す
2. サイズ
- 長さ:おおよそ30〜50cm程度
- 長いほど低音域が出やすく、短いほど高音が出やすい
- 直径:1〜2cm程度
- 小さく軽量なので手で持ちやすく、携帯性が高い
- 重量:数十グラム〜100g前後
- 素材によるが非常に軽いので、野外での演奏向き
3. 音・演奏の特徴
- 倍音的な響き:指孔がないため、息の強弱と唇の位置で倍音を作り音程を調整
- 音色:
- 牧歌的で素朴
- 遠くまで響くため、野外で羊や山羊を呼ぶ用途に適していた
- 演奏法:
- 片端から吹き込み、もう片方を手や唇で部分的に覆うことで音高を変える
- 現代のリコーダーのように正確な音階は難しいが、自然な音の揺らぎや倍音が魅力
4. 外観上の特徴
- 素朴でシンプルな形状
- 手作り感が強く、一本一本が微妙に違う音色
- 民俗楽器としては、装飾的に刻印や模様を入れることもある
種類についてバリエーション
ティリンカ(Tilinca/Tilinkó)の種類・バリエーションについて詳しくまとめます。
A. 長さによる分類
| タイプ | 長さ | 音域・特徴 |
|---|---|---|
| 短管型 | 約30cm前後 | 高音寄り、軽快で明るい音色 |
| 中管型 | 約35〜40cm | バランスの取れた音色、倍音も豊か |
| 長管型 | 約45〜50cm | 低音寄り、深く伸びやすい響き、野外で遠くまで届く |
B. 素材による分類
| 素材 | 音色の特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 竹・葦 | 軽く、柔らかい音色 | 伝統的・民俗的 |
| 柳・菩提樹 | やや太めで温かい音色 | 牧畜民が好んで使用 |
| 木材(加工木) | 安定した音質、耐久性あり | 現代製作向き |
| プラスチック | 音色は人工的だが軽量・安価 | 学習用や輸入向け |
C. 吹き口・構造のバリエーション
- 開口部タイプ
- 片端吹き:片端に唇を当てて息を吹き込む
- 両端開放型:手や唇で片方を部分的に覆うことで音程調整
- 装飾型
- 木彫り・刻印・彩色があるもの
- 民族舞踊や祭り用に装飾が施される場合あり
D. 音色・演奏スタイルによるバリエーション
- 倍音強調型:唇・息の操作で倍音がよく響くもの
- 自然音模倣型:鳥の鳴き声や風の音を表現する用途に特化
- 楽曲用型:短管・中管で、民謡や村祭りの旋律に合わせやすい調整がされているもの
E. 地域による呼称・スタイルの違い
| 地域 | 呼称 | 特徴 |
|---|---|---|
| ルーマニア北部(ブコヴィナ地方) | Tilincă | 牧畜・民俗用途、自然素材 |
| ウクライナ | Тилинка (Tilynka) | 短管型が多く、倍音演奏重視 |
| ハンガリー | Tilinkó | 村祭りや民族音楽で使用、装飾的要素があることも |
| スロバキア・モルドバ | Tilinca/Telenka | 村落文化での呼称・伝播あり |

ティリンカの曲
ティリンカは主に東ヨーロッパの伝統音楽などで使用される楽器です。
奏法、難易度
ティリンカ(Tilinca/Tilinkó)の奏法と難易度について、整理して解説します。
1. 奏法(基本)
A. 吹き方
- 唇で息を吹き込む
- 管の片端に唇を当て、息を吹き込む
- 息の強さ・角度・唇の形で音の高さや倍音を調整
- 倍音を活かす
- 指孔がないため、息量・唇の開閉・管の開口部操作で音を出す
- 低音から高音までを滑らかに変化させるには、倍音を意識して吹く必要がある
- 手や口で管の端を覆う
- 管のもう一方の端を手や唇で部分的に覆うことで音程や音色を微調整
B. 音階の作り方
- ティリンカには固定の指孔がないため、西洋音階の正確な音を出すことは難しい
- 主に**自然倍音(ハーモニクス)**を利用して音高を変える
- 民俗音楽では、旋律よりも音の色やリズム感を重視した演奏が中心
C. 表現方法
- 倍音を強調して遠くまで響く音を出す
- 息の強弱・口の開き方・手の位置で多彩な音色を作る
- 自然音や鳥の声の模倣なども可能
2. 難易度
初心者向けポイント
- 簡単に音は出せる:片端から息を吹くだけで音が鳴る
- 軽量・小型なので手軽に持ち運び可能
中級〜上級者向けポイント
- 音程のコントロールが難しい
- 倍音を意識した吹き方が必要
- 低音から高音まで滑らかに演奏するには練習が必要
- 旋律表現は高度
- 指孔がないため、西洋音楽の正確な音階で演奏するのは難しい
- 民俗音楽や即興演奏に向く
- 息と唇の微妙な操作が必須
- 音色・音量・音程を自在に操るには数週間〜数か月の練習が推奨
有名な奏者
Gheorghe Tisalita
- ルーマニアのティリンカ(telenka)奏者として記録がある。ディスコグラフィーにも彼の名前がある。
Victor Dubenco
- 伝統的なルーマニアの管楽器奏者。Facebookの投稿などで、ティリンカ(tilinca)を含む伝統風笛を演奏している。
Kyiv Ethno Trio
- ウクライナを拠点に活動するエスノ・トリオ。彼らのライブ映像で Теленка(telynka) を演奏するメンバーがいる

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
ティリンカ(Telenka/Tilinca/Tilinkóなど)の 新品/中古品の製品ラインナップ と 価格相場を、現在確認できるものをもとにまとめました。
製品ラインナップと価格相場
以下は、ティリンカ/ティレンカ系オーバートーン笛の代表的な入手ルートと価格例です。
新品(製作品・手作り系)
| 製品 | 価格(おおよそ) | 特徴・備考 |
|---|---|---|
| Telinka / Telynka(メイプル材、クロマチック、折りたたみ式)(JOMARTS) | US$79.99(約1万円台) | メイプル製、2つ穴、CCC調、折りたたみで持ち運びやすい。 |
| Telinka / Telynka(D調、メイプル折りたたみ式)(JOMARTS) | US$79.95 | 同じくD調タイプ。 |
| Telenka(オープン木製フルート、キーD)(eBay) | US$78.00(新) | ハンガリー/東欧系。素材は木。 |
| Telenka(キーA、オーバートーン)(eBay) | US$82.00 | ハンガリー語系 “Tilinko” としても売られている。 |
| Tylynka / Telynka(手作り、ニワトコ材)(Etsy) | US$85〜(オプションによる) | 東ヨーロッパ伝統スタイル。Burn加工などのオプションあり。 |
| Tilinkó / Overtone flute(チェスナットまたはニワトコ材)(Doromb) | 21.6 ユーロ前後(モデルによって異なる) | ハンガリー伝統。A, B, C, D, E, F, Gなど複数調律から選べる。最も一般的なのはD。 |
中古(セカンダリーマーケット)
- eBay(Telenka D調)
70〜85 USDあたりの出品が見られます。例:Guitarius UA 出品のものは US$70(+発送) - Etsy の中古/セミハンドメイド
ティレンカ系のオーバートーン笛がときどき出品されており、価格帯は数十ドル〜100ドル台前半が中心(ただし在庫・出品者による)。
価格相場まとめ(概算)
- 新品: US$ ~75〜90(おおよそ ¥10,000〜13,000 程度)で、シンプルな手作りティレンカ/ティリンカが入手可能。
- 中古:大きく変動するが、eBayなどでは US$70〜85 程度の出品をよく見かける。
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