ツィンバロムとは、ハンガリーの民族楽器です。ツィンバロムはヨーロッパの東部地域に当たるハンガリーやルーマニア、オーストリアなどに伝播した楽器で、台形の箱に張った金属製の弦を叩いたり弾いたりすることで音が出ます。近代のヨーロッパオーケストラではこの楽器が良く使われていました。
起源と歴史
ツィンバロムはハンガリーで誕生した楽器です。曲を用いて演奏する方がふえています。チェンバロやダルシマーなどとあわせて東欧の地域では有名です。
1. 起源
- ツィンバロムは、ハンマード・ダルシマー(打弦ツィター)の一種で、中欧・東欧地域で発展した伝統楽器。
- 起源は**ペルシアのサントゥール(Santur)**や中東の打弦楽器に遡るとされる。
- 13〜15世紀にはヨーロッパに伝わり、地方ごとに異なる形で発展。
2. 近代化の始まり(19世紀)
- **19世紀中頃、ハンガリーのヨーゼフ・シュンダ(József Schunda)**が楽器を改良。
- 1874年に近代的な「コンサート型ツィンバロム」が誕生。
- **脚(スタンド)**を装備
- ペダル付きダンパーで音の長さを調整可能
- 音域や表現力が大幅に向上
3. 20世紀の発展
- 民族音楽だけでなく、クラシック音楽やオーケストラでも使用されるようになった。
- 作曲家:コダーイ、バルトーク、ストラヴィンスキー などが作品に取り入れた。
- フォーク音楽復興運動(特にハンガリーやルーマニア)で、民族音楽の主要楽器として定着。
4. 現代
- ヨーロッパ各地の民族音楽、映画音楽、現代音楽、クロスオーバー音楽で使用。
- 演奏法はハンマーで叩く基本は変わらず、ペダル付きモデルで表現力を拡張。
- 世界中で演奏されるコンサート型ツィンバロムは、民族型よりも大型で音域が広い。
特徴と構造、サイズ
1. 特徴
- **打弦楽器(ハンマード・ダルシマー)**で、金属弦を小さなハンマーで叩いて演奏。
- 金属的で煌めく音色が特徴で、民族音楽だけでなくクラシックや現代音楽にも使用される。
- ペダル付きモデルはダンパー操作により音の長さ(サステイン)をコントロール可能。
- 音域はモデルによるが、コンサート型で4オクターブ以上あるものも多い。
2. 構造
(1) ボディ
- 台形(トラペゾイド)形状の共鳴箱。
- 木製で内部に響板を持ち、弦の振動を増幅。
- 脚(スタンド)付きの大型モデルが多い。
(2) 弦
- 金属製で、多数の弦が張られている。
- 弦は音域ごとに異なる太さがあり、高音・低音が明瞭に出る。
(3) ハンマー
- 両手に持つ小さなハンマー(マレット)で弦を叩く。
- ハンマーの材質や形状で音色が変わることもある。
(4) ペダルとダンパー
- 足元のペダルでダンパーを操作し、音を止めたりサステインを伸ばしたりできる。
- コンサート型では複数ペダルで細かい制御が可能な場合もある。
3. サイズ
| 項目 | 民族型ツィンバロム | コンサート型ツィンバロム |
|---|---|---|
| ボディ形状 | 台形(小型) | 台形(大型) |
| 弦の数 | 約30〜40本 | 60本以上もあり |
| 音域 | 2〜3オクターブ | 4〜5オクターブ以上 |
| 脚の有無 | 簡易スタンドの場合あり | 脚付き固定型が一般的 |
| ペダル | なしまたは簡易 | ダンパー付き、複数ペダル可能 |
- 民族型は小型で持ち運びやすく、フォーク演奏向き
- コンサート型は大型で音域が広く、オーケストラや現代音楽向き
種類についてバリエーション
ツィンバロム(Cimbalom)の種類・バリエーションについて整理します。形状や用途に応じていくつかのタイプがあります。
1. 民族型ツィンバロム(Folk / Traditional Cimbalom)
- 東欧・中欧の民俗音楽で使われる伝統的なモデル。
- 小型〜中型で、持ち運びが容易。
- 脚やペダルがない、もしくは簡易的。
- 弦の数は少なめ(約30〜40本)、音域も2〜3オクターブ程度。
- 音色は明るく軽快で、ロマ/ジプシー音楽、ハンガリーやルーマニアの民俗音楽で主に使用。
2. コンサート型ツィンバロム(Concert Cimbalom)
- 19世紀にハンガリーのシュンダが開発した近代型。
- 大型で安定した台形の共鳴箱、脚付きスタンド。
- ペダル付きダンパーで音の長さを調整可能。
- 弦の数は多く(60本以上)、音域は4〜5オクターブ以上。
- クラシック音楽やオーケストラ、映画音楽、現代音楽などで使用。
3. 弦の種類・チューニング別バリエーション
| 弦タイプ | 用途 |
|---|---|
| スチール弦 | コンサート型、明瞭で煌めく音色 |
| 銅巻き弦 | 民族型、柔らかめの音色 |
| チューニング | 文化や地域により微妙に異なる。民族型は地域伝承に従うことが多い |
4. サイズ・音域による分類
| タイプ | 弦数 | 音域 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 小型民族型 | 約30〜40本 | 2〜3オクターブ | 民族音楽、フォーク演奏 |
| 中型民族型 | 約40〜50本 | 3オクターブ | 民族音楽+小規模アンサンブル |
| コンサート型 | 60本以上 | 4〜5オクターブ | クラシック・現代音楽、オーケストラ演奏 |

ツィンバロムの音楽
ツィンバロムは近代のオーケストラやロマ音楽のような民族音楽で使われることが多い楽器です。
奏法、難易度
ツィンバロム(Cimbalom)の奏法と演奏難易度について整理します。
1. 基本奏法
(1) ハンマー奏法
- 両手に持った**小さなハンマー(マレット)**で弦を叩く。
- 弦の位置、角度、叩く強さで音量・音色・アタック感をコントロール。
- 高音弦は軽く、低音弦は強めに叩くのが基本。
(2) ペダル操作(コンサート型)
- 足元のダンパーペダルで弦の減衰を調整。
- ペダルを踏むと音が止まらず長く響く(サステイン)
- 踏み方・タイミングで、旋律線や和音の表現力を変化させる。
(3) ハーモニー・和音奏法
- 複数弦を同時に叩いて和音を演奏。
- メロディと和音を組み合わせることも可能。
- コンサート型では広い音域を活かして、旋律+伴奏を同時に演奏することもできる。
(4) トリル・装飾音
- 素早く隣接弦を叩いてトリルや装飾音を表現。
- 民族音楽ではリズムの装飾や華やかさを出す重要な技法。
2. 難易度
| 難易度 | 説明 |
|---|---|
| 初級 | 簡単な旋律・リズムパターン。ハンマーの基本操作に慣れる段階 |
| 中級 | メロディ+簡単な和音、ペダル操作による音の長短の調整、トリル・装飾音 |
| 上級 | 両手で独立した旋律と伴奏を同時演奏、広い音域を駆使した表現、速いパッセージや高度なリズム変化 |
- ハンマーの扱いとペダル操作の両方を同時に行う必要があり、初めての人には少し難易度が高い。
- 民族型は小型で弦数が少なく比較的扱いやすいが、コンサート型は弦数が多くペダル操作も加わるため総合的な技術力が求められる。
有名な奏者
ツィンバロム(Cimbalom)の有名な奏者について整理します。民族音楽からクラシック・現代音楽まで幅広く活躍する奏者がいます。
1. Miklós Lukács(ミクローシュ・ルカーチ)
- ハンガリー出身のコンサート型ツィンバロム奏者
- クラシック音楽、現代音楽、ジャズまで幅広く活動
- 世界各地のオーケストラやソロコンサートで演奏経験豊富
- 教育者としても活躍し、ツィンバロムの普及に貢献
2. András Szántó(アンドラーシュ・サントー)
- ハンガリーの伝統音楽を継承する民族型ツィンバロム奏者
- フォーク音楽・ジプシー音楽の分野で非常に有名
- 民族楽器の表現力を生かしたソロ演奏やアンサンブルで活躍
3. Kálmán Balogh(カルマーン・バロー)
- ハンガリーのジプシー音楽(ロマ音楽)を代表する奏者
- 若手時代から数多くのコンサート・フェスティバルで演奏
- 民族型ツィンバロムの演奏技術・即興演奏で高い評価
4. Zoltán Kocsis(ゾルターン・コチシュ)
- 主にクラシック音楽の作曲家・ピアニストとして有名だが、ツィンバロム演奏も行う
- 20世紀ハンガリー音楽の演奏家として、ツィンバロムをオーケストラ作品に取り入れた

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
ツィンバロム(Cimbalom)の 新品・中古の製品ラインナップと価格相場 を、現在確認できる情報からまとめました。ただし、ツィンバロムは非常にニッチ&大型楽器なので、「新品」で一般的な流通が少なく、中古(ヴィンテージ・伝統型)が中心になるケースも多いです。
🔍 新品・新作(または小型モデル)
以下は、楽器店・専門店で取り扱われている小型・比較的入手しやすいモデルの例:
| モデル | 種類 | 価格例 |
|---|---|---|
| Small Cimbalom(小型ツィンバロム) | 民族型 / 小型 | £2,415(約 ¥400,000相当) |
| Skeleton Cimbalom(実験的構造モデル) | 弦数少なめ /軽量 | £517.50(約 ¥90,000相当) |
| Thomann Tambal Mic / Small Cimbalom | 楽器+マレット+ソフトケース付き | US$718(Thomann掲載) |
📦 中古/ヴィンテージモデル
ツィンバロムは中古市場に出ることがあり、特にオーケストラ型や伝統型ではクラシック・民族用途で使われていたものが出回ります。
| モデル・出品例 | 価格例 | 備考 |
|---|---|---|
| Hungarian Concert Cimbalom(中古/コンサート型) | US$1,000(eBay) | かなり古いタイプ、ダンパー付きか不明 |
| 小型ポータブル・ツィンバロム(Lajos Bohak製) | £900(オークション) | 限定品/歴史ある工房製、持ち運びしやすい |
📈 価格相場の目安
- 小型・民族型ツィンバロム(新品):£500〜£2,500程度が見られる(例:Skeleton〜Smallモデル)
- コンサート型(中古):US$1,000前後でも出るが、良質・伝統工房製はそれ以上が一般的
- 非常に大型・伝統的なコンサートツィンバロム(ヴィンテージ/高級):価格はさらに上がる可能性あり(流通少なので具体例は限定的)
⚠️ 購入時のポイント
- 輸送コスト・サイズ:ツィンバロムは大きく重いため、海外からの輸入は送料・関税が高くなりやすい。
- 調整・メンテナンス:弦のテンション、ペダル(ダンパー)の調整が重要。中古ではこれらの状態をチェック。
- 付属品の確認:マレット(ハンマー)、スタンド、ケースの有無で実用性と価格が大きく変動。
- 試奏の難しさ:普通の楽器店に置いてあることが少ないので、音を確かめるのが難しい。可能であれば専門店や中古市場で状態を見て買った方が安全。
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