イリアン・パイプス(uilleann pipes)はバグパイプと並びアイルランドの伝統楽器です。民族楽器ではあるものの、比較的有名な楽器で、映画やテレビドラマのサウンドトラックによく出てくる楽器です。そのため、聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。イリアン・パイプスは民族楽器であるため、この楽器を専門としている楽器製造メーカーは無名な会社ばかりですが、一定数の需要もある楽器で、世界的には認知されている楽器と言えます。
起源と歴史
ヨーロッパのアイルランドでこのイリアンパイプスの楽器は生まれました。教本なども多数登場しているリード楽器です。販売しているサービスも多く、情報は記事の下で解説します。必要な詳細など問合せなどをしてイリアンを実際に注文、購入してみましょう。
名前の由来
イリアン・パイプスはアイルランド語でいうと肘パイプと呼ばれています。他のバグパイプと異なり、皮袋に空気を送り込む楽器です。そのため、演奏者の呼気ではなく、肘に取り付けられた鞴が代わりに用いられる仕組みになっています。肘を使うことから肘パイプという名前が付けられました。
1. 起源
- 発祥地:アイルランド
- 時代:18世紀初頭
- 原型:スコットランドのグレート・ハイランド・バグパイプやアイルランドの初期バグパイプ(Union Pipes)を基に発展
- 名称の由来:「Uilleann(ウィリン/イーラン)」はアイルランド語の uillinn(肘) から
- 演奏時に肘で操作するベルロウ(空気袋)が特徴
- 「肘で空気を送るパイプ」という意味を持つ
2. 歴史の発展
| 年代 | 出来事 |
|---|---|
| 18世紀初頭 | 「Union Pipes」として知られるバグパイプから発展。肘操作によるベルロウが導入され、室内演奏向けに改良 |
| 19世紀 | アイルランド各地で普及。民俗音楽や舞踏音楽で使用される |
| 20世紀初頭 | 「Uilleann Pipes」という名称が定着。伝統音楽の象徴として認識される |
| 20世紀中盤 | 技術革新により、リードやレギュレーターの精度向上。国内外の音楽学校でも指導される |
| 2017年 | ユネスコ無形文化遺産に登録(Uilleann piping) |
| 現代 | アイルランド伝統音楽の中心楽器の一つとして演奏されるほか、ジャズやワールドミュージックにも応用される |
3. 歴史的特徴
- 室内向けに進化
- グレート・ハイランド・パイプに比べて音量は控えめで、室内演奏やアンサンブルに適する
- 構造の進化
- ドローン・チャンター・レギュレーターを備え、旋律と和声を同時に演奏可能
- 文化的価値
- アイルランドの民俗音楽・舞踏音楽に欠かせない楽器
- 現代でも伝統音楽保存や教育に重要な役割を果たす
💡 ポイント
- 「イリアン・パイプス」は、単なるバグパイプではなく、室内演奏に適した複雑な構造を持つアイルランド独自の伝統楽器
- 肘操作による空気管理、ドローンとレギュレーターで伴奏も可能、という点が他のバグパイプとの最大の違い
特徴と構造、サイズ
1. 特徴
- 室内向けバグパイプ
- グレート・ハイランド・パイプより音量は控えめ
- 家庭や小規模な演奏空間で演奏可能
- 柔らかく表情豊かな音色
- メロディと和声(伴奏)を同時に出せる
- 音色が豊かで、アイルランド伝統音楽に適している
- 複雑な奏法が可能
- ドローン・レギュレーターで和声・リズムを補助
- チャンターで旋律を自由に演奏
2. 構造
イリアン・パイプスは、複数の管とベルロウ(空気袋)で構成されます。
- ベルロウ(Bag)
- 肘で操作して空気を送り込む膨張袋
- 息ではなく肘の動きで空気圧を維持
- 空気圧が安定すると音も安定する
- チャンター(Chanter)
- 旋律を吹く管
- 指で穴を押さえて音程を作る
- メロディの演奏に使用
- ドローン(Drones)
- 持続音を出す管
- 一定の低音で旋律を支える
- 単音で和音の土台を作る
- レギュレーター(Regulators)
- 鍵盤付きの管
- 和音やリズムを伴奏する
- 手首や指で操作して、旋律と同時に演奏
- リード(Reeds)
- チャンター、ドローン、レギュレーターそれぞれに設置
- 空気の振動で音を発生させる
- 木製リードが多く、微調整で音色を変えられる
3. サイズ
| 部位 | 標準的サイズ・形状 |
|---|---|
| ベルロウ | 肘に巻き付ける大きさ、成人でも片手で操作可能 |
| チャンター | 約30〜40cm(機種による) |
| ドローン | 30〜50cm程度、持続音の管 |
| レギュレーター | 10〜20cm前後、鍵盤数は3〜4本程度が多い |
| 全体 | 膝の上に置く形で演奏、成人サイズでも肩にかけずに操作可能 |
⚠️ 標準的なサイズは成人用。子ども用モデルもあるが少なく、演奏難易度が高いため初心者は大人用で学習することが一般的。
4. 特徴まとめ
- 肘操作のベルロウにより息を使わず空気圧を維持
- チャンターで旋律、ドローンで持続音、レギュレーターで伴奏が可能
- 室内向きで柔らかく表情豊かな音色
- 構造が複雑なため、演奏には高度な技術が必要

奏法、難易度
1. 基本奏法
1) 空気供給(ベルロウ操作)
- 肘でベルロウ(空気袋)を押して空気圧を維持
- 息はほとんど使わず、膝の上に置いた空気袋で管に空気を送る
- 空気圧が不安定だと音程や音量も不安定になるため、演奏の基礎となる
2) チャンター奏法
- 指で穴を押さえて旋律を演奏
- 旋律音域は通常2オクターブ前後
- 装飾音(ornamentation)が豊富で、トリルやグレースノートなどのアイルランド伝統音楽独特の表現が多い
3) ドローン操作
- ドローンは単音で持続音を出す
- 音程の安定が旋律の安定につながる
- 演奏中はチャンターと同時にドローンを鳴らす
4) レギュレーター操作
- 指や手首で鍵盤を押して和音・リズムを演奏
- 同時に旋律を演奏するため、独立した両手の動きが必要
- 複雑な伴奏や即興演奏に使われる
2. 難易度
| レベル | 特徴 | 主な課題 |
|---|---|---|
| 初心者 | 空気袋操作とチャンターの単旋律に集中 | 肘での空気供給、チャンターの基本指使い |
| 中級 | ドローンと簡単なレギュレーター伴奏を同時に演奏 | 空気圧の安定、旋律と伴奏の両立 |
| 上級 | 装飾音・トリル・即興伴奏を同時に演奏 | 高度な指使い、レギュレーター操作、微妙な音色調整 |
難易度のポイント
- 多重奏の同時演奏
- チャンター+ドローン+レギュレーターを同時に操作する必要があり、初心者には非常に難しい
- リードの調整
- チャンター・ドローン・レギュレーターそれぞれにリードがあり、調律や音色調整が必須
- 表現の自由度が高い
- アイルランド伝統音楽特有の装飾音やリズムを表現するには熟練が必要
💡 ポイント
- イリアン・パイプスは「構造の複雑さ」「空気圧の管理」「同時多重演奏」という点で非常に難易度が高い楽器
- 初心者はまずチャンターとベルロウの操作に慣れることが第一歩
- 中級者以降でドローンとレギュレーターを組み合わせた演奏に挑戦し、装飾音や即興表現で上級者レベルに到達
有名な奏者
イリアン・パイプスはアイルランドの伝統楽器であり、世界的に著名な奏者が多数います。ここでは代表的な奏者を紹介します。
1. 歴史的・伝統的奏者
| 名前 | 国籍 | 活動・特徴 |
|---|---|---|
| ウィリー・クラーク (Willie Clancy) | アイルランド | コーク出身。伝統的なイリアン・パイプス奏者の代表。彼の名を冠した音楽祭「Willie Clancy Summer School」が有名。 |
| レオ・シャロン (Leo Rowsome) | アイルランド | ダブリン出身。20世紀初頭の重要な奏者・教師。イリアン・パイプス製作家としても知られる。 |
| セシル・シャロン (Cecil Sharpe) | イギリス | 伝統音楽研究家としてイリアン・パイプスの普及に貢献。 |
2. 現代の有名奏者
| 名前 | 国籍 | 活動・特徴 |
|---|---|---|
| デニス・マーフィー (Denis Murphy) | アイルランド | 伝統音楽の巨匠。チャンターと装飾音に定評。 |
| マイケル・マクギル (Michael McGoldrick) | アイルランド | イリアン・パイプスだけでなくフルートやティン・ホイッスルも演奏。ワールドミュージックやジャズとの融合も。 |
| フレッド・モリソン (Fred Morrison) | スコットランド | イリアン・パイプス、グレート・ハイランド・パイプス、ウォルサム・ホイッスルなど幅広く演奏。録音多数。 |
| ニコール・グリフィン (Niall Griffin) | アイルランド | 現代のアイルランド音楽フェスティバルでも演奏。レコーディング・教育活動に参加。 |
3. ポイント
- イリアン・パイプスは「伝統音楽の継承」と「現代音楽の応用」の両方で重要な楽器
- 伝統奏者は装飾音とメロディの美しさを重視
- 現代奏者は即興や多ジャンル融合も積極的に行う
- 教育や録音、フェスティバル活動を通じて、世界中にファンが広がっている
イリアン・パイプスの例
イリアン・パイプスは民族楽器ということから無名な楽器であるという認識を持っている人は多いかもしれません。しかし有名な映画でもこの楽器は使われているのです。大ヒットした映画タイタニックで使われています。この映画はタイタニック号の沈没を背景にしたラブストーリーで多くの称賛を受けました。アカデミー賞では14部門にノミネートされ、『イヴの総て』(1950年)と並ぶ最多ノミネート作品となり、作品賞と監督賞を含む11部門を受賞しています。
Uilleann Pipes の新品・中古の製品ラインナップと価格相場
この楽器(アイルランド伝統のバグパイプ形式)は、構造・仕様・製作者・セット内容によって価格が大きく変動します。以下に、実際のデータをもとに「新品/中古」「セット種類別(練習用、ハーフセット、フルセット)」の価格帯と選び方のポイントを整理します。
📦 製品ラインナップ例(新品・主なセット種類)
(製品としての「セット内容」を基に)
※製品名は便宜的に紹介しています。
各製品の特徴と解説:
- Uilleann Pipes Practice Set (entry‑level):初心者向けに「チャンター+ベルロウ(空気袋)+バッグ+簡易管」などを含む簡易セット。比較的手頃な価格帯。
- Uilleann Pipes Chanter Only:旋律管(チャンター)単体モデル。ドローン・レギュレーターなし。練習・部品交換・アップグレード用途に。
- Uilleann Pipes Half Set:チャンター+ベルロウ+袋+ドローン(伴奏管)あり、レギュレーターなしまたは簡易。中級向け。
- Uilleann Pipes Full Set (standard):チャンター+ベルロウ+袋+ドローン+レギュレーター(和声管)あり。一般的な「フルセット」。
- Uilleann Pipes Full Set (premium):上位仕様。材質・装飾・製作者・キー数などが高級。コレクター・プロ奏者仕様。
- Uilleann Pipes Practice Set (budget):さらに廉価な入門仕様。材質や仕様を簡素化したモデル。
- Uilleann Pipes Intermediate Set:入門セットの上、フルセットの下あたりの仕様。
- Uilleann Pipes Full Set (collector):さらにカスタム材・限定仕様など。価格は最も高くなる。
💶 価格相場(新品・中古)
新品の目安価格
- 調査によると「練習セット/簡易仕様」で 約 US$1,000前後(約 ¥150,000〜)からスタート。
- 半セット〜フルセットになると、例えば英国メーカーでは “Full Set” で £4,200(約 ¥700,000前後) の例あり。
- 高級仕様・注文制作・プレミアブランドになると US$6,000〜US$7,500(約 ¥1,000,000〜¥1,200,000以上) の価格帯。
- 例:ある製作家が提示している基本価格表で “Full Set” が US$14,115(約 ¥2,000,000以上)という記録も。
中古の目安価格
- 中古市場では「ハーフセット/少々使用歴あり」で £4,750(約 ¥900,000前後) の例あり。
- 中古・練習セットレベルでは €2,000前後(約 ¥300,000〜) などの出品あり。
- 状態・仕様・製作者・材質によって大きく変動するため、「価格だけで判断せず現物確認・製作者確認が重要」。
🛠 選び方のポイント
- 予算と用途を明確にする:練習用かプロ使用かで仕様に差が出る。
- セット内容を確認:ドローン/レギュレーター/キー数/材質(木材・装飾)など。
- 製作者・ブランドの信頼性:名工・ブランドほど価格が高いが価値も安定。
- 材質・仕様:エボニー・ボックスウッド・真鍮・銀バッジ等、仕様が音質/価格に影響。
- 中古なら状態確認を必ず:リードの交換歴、ベルロウの状態、管のきしみ・漏れなど。
- 将来のアップグレードを考慮:ハーフセットからフルセットへ移行する選択肢なども。
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