映画音楽は映画の場面を掻き立てるために必要なもので、ほとんどがBGMです。映画の音楽はもはや1つのジャンルとして確立されており、多数の有名な作曲家が手掛けています。ほとんどの作曲家はクラシック音楽をメインに活動している専門家が多く、手掛ける音楽のジャンルは多岐にわたります。映画音楽の歴史と特徴について記事にしています。
映画音楽とは?
映画音楽は映画作品の中で流れる音楽を指します。情報では音楽としての定まった形式はなく、映画の内容の多様化に従い、あらゆる種類の音楽が使用されています。一番多いのはクラシック音楽ですが、多様化しており場面によってジャズ、イージーリスニング、ポップス、EDMなど様々な音楽が使われています。そのため、これと言った特定のジャンルが使用されているわけではありません。
例外を除いて映画音楽のほとんどはBGMであり、ボーカルが入っていません。作品の編集や表現は監督などの好みも入ります。映画館で注目されるのは特別な俳優で登場人物や言葉や物語、存在に目がいきがちですが、さまざまな音楽家が状況により作っている音楽も映画で活躍しています。
1. 定義
- 映画と一体化した音楽
- 映像の背景、登場人物の心理、場面の緊張感・感動を音楽で補強
- 目的:
- 観客の感情を誘導
- 映画のテーマや時代背景を表現
- キャラクターやシーンの印象を強化
2. 形式・種類
- 劇伴(Background Score)
- 映像に合わせて流れるオーケストラや電子音楽
- テーマ曲(Main Theme / Leitmotif)
- 登場人物や物語の象徴として繰り返し使われるメロディ
- 挿入歌(Song / Insert Song)
- シーン中に特定の歌や楽曲を使用
- サウンドトラック(Soundtrack)
- 映画の音楽をまとめたアルバムとして販売されることも
3. 映画音楽の役割
- 感情の演出:悲しみ、喜び、恐怖、緊張など
- 時間・場所・時代の表現:クラシック、民族音楽、現代音楽などで設定を明確化
- 物語の一体化:音楽と映像で観客の没入感を高める
- 象徴・記号化:特定キャラクターやシーンを象徴するテーマ曲(例:スター・ウォーズのテーマ)
4. 制作方法
- 作曲家(コンポーザー)が映画に合わせて作曲
- 映像編集後に音楽を合わせることもあれば、先に作曲して撮影に反映させることもある
- オーケストラ、電子音楽、民族楽器、ロックバンドなど様々な編成が使用される
映画音楽の歴史について
映画は昔は完全なる無音でした。しかし映画の中で音楽を使おうという試みが19世紀あたりから起こるようになりました。1895年にリュミエール兄弟がパリで公開した最初のスクリーンに映写する方式の映画「シネマトグラフ」ではピアノの伴奏がつけられました。
そして1900年代に入ると、映画に音楽が付けられるのは当たり前の状態になったのです。1900年代初頭までは映画音楽=クラシック音楽という概念で固定されていましたが、第二次世界大戦の後はオーケストラ音楽以外の音楽を積極的に取り入れようとする動きが起こっています。
さらにディズニー音楽を筆頭に独自のオリジナル劇音楽、歌曲なども採用されるようになり多様化しています。
1. サイレント映画時代(1900年代〜1920年代)
- 特徴:
- 映画に音声がなく、劇場で生演奏(ピアノ、オルガン、時には小編成オーケストラ)が伴奏
- シーンに合わせて即興演奏されることも多かった
- 役割:
- 観客に感情や場面の緊張感を伝える
- 物語のテンポや演出を補助
2. トーキーの登場(1927年〜1930年代)
- トーキー映画(音声付き映画)の登場:
- 『ジャズ・シンガー』(1927)など
- 特徴:
- 音楽が映画に組み込まれ、録音されたサウンドトラックとして再生される
- 映像に合わせて作曲された劇伴(Score)が登場
- 代表的作曲家:
- マックス・スタイナー(Max Steiner)
- 『風と共に去りぬ』(1939)での劇伴で有名
- エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(Erich Wolfgang Korngold)
- マックス・スタイナー(Max Steiner)
3. 黄金時代(1930年代〜1960年代)
- 特徴:
- ハリウッド映画でオーケストラを使った壮大な劇伴が定番
- キャラクターごとのテーマ曲(Leitmotif)が確立
- 音楽が映像の心理描写や物語進行を強化
- 代表作曲家:
- バーナード・ハーマン(Bernard Herrmann):『サイコ』
- ジョン・ウィリアムズ(John Williams):後期ハリウッドで影響大
4. 多様化の時代(1970年代〜1990年代)
- 特徴:
- ロック、ポップ、ジャズ、民族音楽など多様なジャンルが映画音楽に導入
- 電子音楽やシンセサイザーも使用され、SF映画や未来系映画に適応
- 代表作曲家・例:
- ヴァンゲリス(Vangelis):『ブレードランナー』(1982)
- ハンス・ジマー(Hans Zimmer):『ライオン・キング』(1994)、電子音とオーケストラ融合
5. 現代(2000年代〜現在)
- 特徴:
- オーケストラ+電子音楽、サンプル音源、デジタル技術を駆使
- ゲーム音楽やアニメ音楽との連携も増加
- 役割の拡大:
- 単なる背景音ではなく、物語の象徴や演出の重要要素
- 代表作曲家:
- ハンス・ジマー(Hans Zimmer)
- ジョン・ウィリアムズ(John Williams)
- 久石譲(『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』)

派生音楽
映画音楽は今となっては大きなジャンルとなり、巨額のお金も回るようなジャンルになりました。そんな背景もあり、サウンドトラックブームなども生まれており、多数のサウンドトラックオタクが映画音楽を聴いています。そしてそんななか、派生ジャンルも登場しました。
Epic Music
Epic MusicはProduction Music Libraryの会社が始めたビジネスの中で生まれたジャンルです。映画の予告編、ゲームの予告編、CM、さらにはテレビ用BGMなどとして使用することを目的として、映画風の楽曲をEpic Musicと呼んでいます。このジャンルは映画音楽の作家が本業の映画音楽以外のときに手掛けていることが多く、本場のクラシック音楽にEDMや民族音楽、ロックなどを混ぜたハイクオリティの音楽が多いです。
映画音楽はなぜBGMなのか
一部の映画を除いて、90%以上の映画音楽はBGMです。これはなぜなのでしょうか。これには理由があります。映画に歌謡曲を入れてしまうと映像を殺してしまうのです。あくまで映画音楽は映画の映像を引き立てるためのわき役でしかありません。そのため、映像がそもそも第一であり、音楽は二の次なのです。そのため、このジャンルはほとんどがBGM、しかも比較的静かな音楽が多いのです。うるさい音楽では映像が死んでしまいます。
作曲、編曲に挑戦できる!映画音楽の音楽的特徴
映画音楽の音楽的特徴は、映像や物語の感情、雰囲気、ドラマ性を強化するために作られる音楽的手法や表現の特徴として整理できます。以下にまとめます。
1. オーケストレーション
- オーケストラ中心の編成が多い
- 弦楽器、管楽器、打楽器、ピアノなどを組み合わせ、豊かな表現力を確保
- 小編成や電子音楽との組み合わせも可能
- SF・近未来映画ではシンセサイザーやサンプラーを使用
2. テーマ・モチーフ(Leitmotif)
- キャラクターや場面ごとのテーマ曲を設定
- 例:『スター・ウォーズ』のルークやダース・ベイダーのテーマ
- 繰り返し登場することで象徴性を持たせる
- 感情や物語の進行を音楽で示唆
3. ダイナミクス(強弱・緩急)
- 静と激、弱音と強音の変化で映像の緊張感や感動を演出
- 音楽の強弱やテンポの変化で物語のドラマ性を強化
4. 調性・和声
- メジャー/マイナー、モードなどを駆使して感情表現
- メジャー:明るさ・希望
- マイナー:悲しみ・緊張
- ディソナンス(不協和音)で不安・恐怖を表現
5. リズム・テンポ
- 映像の動きやアクションに合わせたリズム
- 戦闘シーン:速いテンポと規則的ビート
- 恋愛シーン:ゆったりしたテンポで感情的表現
- シーンごとにテンポや拍子を変化させることも多い
6. 音色・楽器の特徴
- シーンの雰囲気に合わせて楽器を選択
- 弦楽器:感情表現
- 金管楽器:力強さ・英雄的表現
- 打楽器:緊張・アクション
- シンセサイザー:近未来・SF感
- 特殊奏法や効果音的な演奏で映像効果を強化

映画音楽の多様化とジャンルの融合
映画音楽は芸術のなかでも、従来のオーケストラ中心の劇伴から、ロック、ポップ、ジャズ、民族音楽、電子音楽などさまざまなジャンルと融合することで多様化してきました。以下に整理します。
1. ロック・ポップとの融合
- 1970年代以降、若者文化やロックの影響を反映
- 例:
- 『スター・ウォーズ』ではオーケストラが中心だが、1970年代のSF映画ではロックやポップの影響も見られる
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の挿入歌はロック音楽を活用
- 特徴:
- ドラムやエレキギターで躍動感を演出
- ポップでキャッチーな楽曲で映画のテーマや象徴を表現
2. ジャズ・ブルースの影響
- 1940〜1960年代、アメリカ映画で活発
- 特徴:
- サックスやピアノ、スウィングリズムで都市や夜の雰囲気を表現
- 犯罪映画(フィルム・ノワール)や恋愛映画に多用
- 代表作例:
- 『アパートの鍵貸します』
- ヘンリー・マンシーニ作『ピンクパンサーのテーマ』
3. 民族音楽・ワールドミュージックの導入
- 1980年代以降、アフリカ、アジア、南米などの民族音楽を取り入れる
- 特徴:
- 映画の舞台や文化背景を音楽で表現
- 現地の楽器・リズム・旋律を組み込みリアル感を演出
- 代表作例:
- 『ライオン・キング』(アフリカの打楽器・合唱)
- 『アバター』(ポリネシアン的リズムとエスニック音色)
4. 電子音楽・シンセサイザーの活用
- 1970年代後半〜1980年代以降
- 特徴:
- 近未来・SF・サイバーパンク系映画で効果的
- ヴァンゲリス『ブレードランナー』やジョン・カーペンター作品
- メリット:
- 機械的・非現実的な雰囲気を演出
- オーケストラでは表現できないサウンドテクスチャを実現
5. ゲーム音楽・アニメ音楽との融合
- 1990年代以降、ゲームやアニメの音楽技術が映画音楽に影響
- 特徴:
- デジタル音源やサンプラーを駆使
- リズムや効果音をより緻密にコントロール可能
- 例:
- 『攻殻機動隊』シリーズのサウンドトラック
- デジタルシンセによる近未来表現
6. 多ジャンル融合の効果
- 表現の幅が拡大:
- 感情、時代、場所、キャラクター、文化背景を多角的に表現
- 映画ジャンルごとに適応:
- SF・ファンタジー:電子音楽+オーケストラ
- アクション・冒険:ロック・オーケストラ
- 歴史・民族ドラマ:民族音楽+オーケストラ
現代の映画音楽のトレンド
現代の映画音楽のトレンドは、オーケストラ伝統の継承と、電子音楽・多ジャンル融合・デジタル技術の積極的活用が特徴です。以下に整理します。
1. オーケストラ+電子音楽の融合
- 特徴:
- 伝統的なオーケストラサウンドとシンセサイザーやサンプラーを組み合わせる
- 感情的な豊かさと未来的/SF的質感を同時に表現
- 代表例:
- ハンス・ジマー:『インセプション』『ダークナイト』
- 『ブレードランナー 2049』:オーケストラ+シンセ音響
2. 多ジャンルのクロスオーバー
- 特徴:
- ロック、ポップ、ヒップホップ、民族音楽などの要素を映画音楽に導入
- 映画ジャンルやキャラクターに合わせた柔軟な音楽表現
- 代表例:
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』:70年代ポップ・ロック曲を挿入
- 『ブラックパンサー』:アフリカンリズムとオーケストラの融合
3. ミニマル/アンビエント的アプローチ
- 特徴:
- 繰り返しや持続音、空間的な響きを重視
- 緊張感や心理描写を音楽で演出
- 代表作曲家:
- マックス・リヒター:『ウォーキング・デッド』、映画『シャッター・アイランド』
- ヨハン・ヨハンソン:『メッセージ』
4. デジタル技術・サンプラーの活用
- 特徴:
- デジタル音源やプログラミングで、オーケストラでは再現できない音響効果や特殊効果を制作
- リアルタイムに音楽と映像の同期を可能にする
- 代表例:
- 電子音+リアル楽器を組み合わせたSF・アクション映画
5. サウンドデザインと音楽の融合
- 特徴:
- 効果音や環境音と音楽を境界なく融合
- 観客の感覚に直接訴え、緊張感や臨場感を増幅
- 代表作例:
- 『インターステラー』(ハンス・ジマー)
- 『ダンケルク』
6. インディペンデント映画・アニメとの連携
- 特徴:
- 少人数編成や電子音主体でコストを抑えつつ独創的な音楽を制作
- アニメ映画でもサウンドトラックが物語の主要表現手段として使用
- 代表例:
- 久石譲:『千と千尋の神隠し』『君の名は。』
まとめ
現代の映画音楽のトレンドは次の通りです:
- オーケストラ+電子音楽融合で感情と未来感を表現
- 多ジャンルクロスオーバーで映画ジャンルに応じた音楽表現
- ミニマル/アンビエント的手法で心理描写や緊張感を強化
- デジタル技術・サンプラー活用で特殊音響や同期演出
- サウンドデザインとの融合で臨場感を増幅
- インディペンデント映画・アニメとの連携で独創性・表現幅を拡大
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