ドムラと言う楽器は知っていますか?ロシアといえばバラライカを連想する方が多いでしょうが、ドムラは違う楽器に当たります。ドムラはもともとロシアにあった楽器ではなく、モンゴルによって持ち込まれてきた楽器とも言われています。ドムラはバラライカに似ていますが、実は形状や音色が違うのです。
起源と歴史
ドムラはモンゴルからロシアに持ち込まれてきたと言われていますが、一般的にはロシアの楽器とされています。
1. 起源
- ドムラはロシアの民族弦楽器で、リュート属の撥弦楽器。
- 起源は12世紀頃まで遡るという説があり、モンゴル(タタール)経由でロシアに伝わった可能性がある。
- 初期は民間で使用される小型の弦楽器で、民謡や祭りの伴奏に使われた。
2. 廃絶と再生
- 16〜17世紀には**スコモローヒ(放浪芸人)**などによって演奏されていたが、一時期ほとんど姿を消した。
- 民間での使用が減り、ドムラは一時期廃絶状態となる。
3. 19世紀末の復興
- ワシーリー・ワシリエヴィッチ・アンドレーエフ(Vasily Vasilievich Andreyev)が、ドムラを改良して復興。
- 胴体や弦の構造を整え、現在知られているドムラの形状に確立。
- ロシア民族音楽オーケストラの標準楽器として採用され、バラライカとともに低音・旋律パートを担当。
4. 20世紀以降
- ソ連時代には民族楽器オーケストラが公式に設立され、ドムラの教育や製造も制度化。
- 現在では、クラシックや現代音楽のアンサンブルでも使用されることがある。
- ドムラのサイズや弦の種類(3弦型・4弦型)も整備され、演奏の幅が広がった。
特徴と構造、サイズ
ドムラ(Domra)の特徴・構造・サイズについて整理します。ロシア民族音楽で使われる撥弦楽器としての特性が分かります。
1. 特徴
- 撥弦楽器(リュート属):ピックで弦を弾く
- 丸胴型の共鳴体:バラライカに比べてやや小ぶりで丸みがあり、柔らかい音色
- 音域:ソプラノからバスまで複数サイズがあり、アンサンブルで旋律・低音支えとして使用
- 弦の本数:3弦または4弦が一般的
2. 構造
(1) 弦と調弦
- 3弦型:伝統的なスタイル
- 4弦型:G–D–A–E(ヴァイオリン/マンドリンに似た調弦)
- 弦はスチール弦が多く、澄んだ響き
(2) ボディ(胴体)
- **丸胴(半球形)**で共鳴が豊か
- 天然木(スプルース、メイプル、シダーなど)で作られることが多い
- 胴の小さなソプラノ型は軽量で取り回しやすい
(3) ネック・指板
- ネックは短めで握りやすく、トレモロ奏法や早弾きに対応
- フレット付きで音程が正確
(4) ペグ・チューニング
- クラシックなギア式ペグで弦を固定
- 弦の張力が強めなので、ペグで微調整しやすい
3. サイズのバリエーション
| サイズ | 用途・特徴 | 弦数 | 音域 |
|---|---|---|---|
| ソプラノ | メロディ担当、軽量 | 3弦/4弦 | 高音域 |
| アルト | アンサンブルの中音部 | 3弦/4弦 | 中音域 |
| バス | 低音支え、和音の厚み | 3弦/4弦 | 低音域 |
| コントラバス | 極低音、オーケストラ用 | 3弦/4弦 | 最低音域 |
- ソプラノ型で弦長:約45〜50cm
- バス型で弦長:約70〜75cm
- コントラバス型はさらに長く、低音の響きを強化
種類についてバリエーション
ドムラ(Domra)の種類・バリエーションについて整理します。サイズや弦数、用途に応じて複数のタイプがあります。
1. サイズによる分類
| サイズ | 用途・特徴 |
|---|---|
| ソプラノ型 | 高音域、旋律担当。軽量でトレモロ奏法に向く |
| アルト型 | 中音域、アンサンブルの中音パート。和音やメロディ両方に対応 |
| バス型 | 低音域支え、和音や伴奏の厚みを担当 |
| コントラバス型 | 極低音、民族オーケストラの低音ラインに使用 |
- ソプラノ〜アルトは一般的に演奏しやすく、ソロでも活用可能
- バス・コントラバス型はアンサンブル向けで、ソロではやや扱いにくい
2. 弦数による分類
- 3弦型:伝統的なスタイル。民間音楽や古典演奏で使用
- 4弦型:G–D–A–E調弦が一般的で、ヴァイオリンやマンドリンと同様に演奏可能
- 弦の本数によって奏法や音域の表現力が変わる
3. ボディ形状・構造による分類
- 丸胴(Bowl-back):伝統的なロシア型。音量・共鳴が豊か
- フラットバック(Flat-back):近代型。演奏姿勢や立奏に適する
- 木材:スプルース、メイプル、マホガニーなど、音色に影響
4. 用途・スタイルによる分類
| 分類 | 特徴・用途 |
|---|---|
| クラシック/伝統型 | 丸胴、トレモロ奏法中心、民族オーケストラ向け |
| フォーク/現代型 | フラットバック、ソロ・アンサンブル両方に対応 |
| 教育・入門用 | 弦がやや細め、軽量、初心者向け |
| プロ・カスタム仕様 | 弦数や音域を拡張、材質や工房による音色カスタム |

ドムラとバラライカの違い
ドムラとバラライカはそもそも形状が違います。バラライカは以下のようなもので、三角形になっています。これに対してドムラは丸い形状をしており、そもそも外見が違うのです。ドムラは音域もさまざまで、ソプラノからバスまで色々なタイプがあります。またドムラは小さな爪状のピックを使い、トレモロを多用して演奏する傾向があります。
これに対してバラライカは音域によりプリマ、セクンダ、アルト、バス、コントラバスで対応していて、主に指で弦を弾くことが多いです。バラライカとドムラはオーケストラで併用されることが多く、バラライカアンサンブルの主メロディーを担当することが多いです。
奏法、難易度
ドムラ(Domra)の奏法と難易度について整理します。ロシア民族音楽で使用される撥弦楽器としての特徴がよく分かります。
1. 基本的な奏法
(1) ピック弾き(撥弦奏法)
- ピック(プレクトラム)を使用して弦を弾く
- メロディ演奏では1弦ずつ弾く、伴奏では和音やアルペジオ
- トレモロ奏法も多用される
- 弦を高速で連続して弾き、音を持続させる技法
- 民族音楽独特の装飾音として使われる
(2) 指弾き
- 小編成やソロ演奏で使用
- 音色が柔らかく、音量を抑えられる
(3) アルペジオ / ストローク
- 低音弦や和音を順番に弾く奏法
- アンサンブルでの低音支えやリズム補助に最適
(4) 装飾奏法(上級)
- ハンマリング、プリング、ハーモニクスなど
- ソロ演奏や現代曲で特殊効果を出す際に使用
2. 難易度の目安
| 奏法 | 難易度 | コメント |
|---|---|---|
| コード・アルペジオ伴奏 | ★★☆☆☆ | 基本の低音支え。初心者でも比較的容易 |
| メロディ演奏 | ★★★☆☆ | 速い指の動きや音程正確性が求められる |
| トレモロ奏法 | ★★★★☆ | 高速連打が必要。表現力を要する |
| 指弾きソロ | ★★★☆☆ | 音色コントロールや音量調整が必要 |
| 装飾奏法(ハンマリング、ハーモニクス) | ★★★★☆〜★★★★★ | 上級者向け。高度な指使いと音感が必要 |
有名な奏者
ドムラ(Domra)の有名な奏者について整理します。民族音楽オーケストラやソロ演奏で活躍する著名な人物がいます。
1. Tamara Volskaya(タマラ・ヴォルスカヤ)
- ウクライナ出身、ロシアで活躍するドムラ奏者
- 民族音楽教育者としても知られ、ソロ・アンサンブル両方で活躍
- 伝統的なドムラ奏法の普及に貢献
- 演奏スタイル:トレモロ奏法を多用し、澄んだ音色が特徴
2. Vladimir Ivanov(ウラジミール・イワノフ)
- ロシアの民族オーケストラ奏者
- ドムラソロやアンサンブル演奏で高い技術を持つ
- 民族音楽コンクールや国際フェスティバルで演奏経験多数
3. Alexander Kuznetsov(アレクサンダー・クズネツォフ)
- ロシア民族音楽オーケストラのリーダー格奏者
- ドムラのソロ・低音支え両方を担当
- 伝統的演奏法の保存と教育に貢献

新品と中古の製品ラインナップと価格相場
ドムラ(Domra)の 新品・中古(ヴィンテージ)モデルおよび価格相場について、具体例とともに整理しました。ただし、ドムラはそれほどメジャーな楽器の海外在庫が限られており、価格には大きな幅があります。
主な製品例(新品・中古)
- 4弦 フォーク ドムラ(天然木)
- 価格:約 ¥89,001(Amazon)
- 新品に近い流通モデル。初心者〜中級者向け。
- 民族ドムラ(ロシア/ウクライナ)
- 価格:約 ¥71,000(メルカリ)
- 中古またはセカンドハンド。海外から流入しているモデル。
その他の参考モデル・価格
- Vintage Russian Domra(4弦、20フレット):約 US$557(Etsy)
- Professional Domra(4弦、24フレット、ナチュラルウッド):$899
- Concert Grade ドムラ(4弦、テナー):A. Simakhov製、新品。中古価格は US$2,000〜2,200 程度。
- 4弦ドムラ(高級、Zubchenko 工房製):ブランド新品。
- DOMRA Vintage Old(4弦、23フレット):€320(約 ¥47,000相当)
価格相場のまとめ
| クラス | 新品の目安価格 | 中古/ヴィンテージの目安価格 |
|---|---|---|
| エントリー〜フォーク系 | 約 ¥8万〜12万(簡易構造・大量生産モデル) | 約 ¥7万前後(中古流通あり) |
| 中〜上級・プロモデル | US$900〜2,000(高品質材、工房製) | US$500〜2,200(ヴィンテージおよび工房製中古) |
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