アンビエントミュージックの作り方は?特徴や歴史、楽器などおすすめ音楽ジャンルの最新版を解説。アンビエントミュージックというジャンルは極めてマイナーで流行することはなかったジャンルです。しかしヒーリングミュージックが流行した2000年代初頭において、このジャンルは人間に対して癒し効果があることが分かり、企業の職場などでも流されていることが多い音楽の一つです。うつ病の予防や不眠症の解決にもなると言われています。
アンビエントミュージックとは?
アンビエントミュージックは曲らしさが一切ありません。そもそもコード進行すら持たず、メロディすらないことも少なくありません。雰囲気や音色だけで構成されている曲が大半を占めています。音によって穏やかさや瞑想の感覚を促すジャンルであり、映像音楽でもよく使われているジャンルです。
このジャンルの音楽は聴くためのものというよりは人間の荒んだ心を癒したり、仕事の能率を上げたり、さらには不眠症の解決などに役立つとされており、他のジャンルの音楽のように聴くということがメインではないのです。なかには虫の鳴き声や、川の流れる音がアンビエントミュージックとして販売されていることもあります。
特徴
- 静かで持続的な音
ゆったりとした音の広がりや、シンセサイザーや自然音を重ねた音が多い。 - リズムが弱い、または無い
伝統的なポップやロックのように「ビートに乗る」ことは少ない。 - 空間を感じさせる
音の残響やエコーで、広がりや深みを演出することが多い。 - リスナーの想像力に委ねる
具体的なストーリーや歌詞はなく、聴く人の気分や環境によって印象が変わる。
歴史・背景
アンビエント音楽という言葉は、**ブライアン・イーノ(Brian Eno)**が1970年代に提唱しました。彼は「音楽は環境の一部になり得る」という考えから、BGMとしても楽しめる音楽を作ろうとしました。代表作には『Music for Airports』などがあります。
用途
- 作業中や勉強中の集中用BGM
- ヨガや瞑想の背景音
- カフェやショップなどの雰囲気作り
アンビエントミュージックの歴史
このジャンルは、シンセサイザーなどの新しい楽器が広く市場に導入された1960年代から1970年代にかけて生まれたジャンルです。特徴としてはあまりメロディやコード進行に変化を持たせず、環境の音を再現していることが挙げられます。
1978年にイギリスの音楽作家ブライアン・イーノによってAmbient 1: Music for Airport”が発表され、アンビエントミュージックが認知されるようになりました。その後、1980年から1990年代にかけて、この音楽は一部でに人気になり、ニッチな需要が生まれています。
1. 前史:環境音や実験音楽の登場(1940〜1960年代)
アンビエントのルーツは、「音楽が環境と一体化する」という考え方にあります。この時期には次のような動きがありました。
- ジョン・ケージ(John Cage)
1940〜50年代、偶然性や環境音を取り入れた作曲を行う。
代表作『4分33秒』では、演奏者が一切音を出さず、環境音そのものを音楽として聴かせるという革新的な試みをしました。 - 電子音楽の実験
1960年代には、シンセサイザーやテープループを使った実験的な音楽が登場。音の持続や空間表現が注目されました。
2. アンビエントの誕生:ブライアン・イーノ(1970年代)
- **ブライアン・イーノ(Brian Eno)**が1970年代初頭に「Ambient Music」という概念を確立。
- イーノの定義は、「音楽は注意を引くことも、背景に溶け込むこともできる」というもの。
- 代表作:
- 『Music for Airports』(1978)
空港の待合室でも心地よく聴けるよう設計されたアルバム。
- 『Music for Airports』(1978)
- イーノは「環境音と音楽の融合」という方向性をアンビエント音楽の中心に据えました。
3. 発展:1980〜1990年代
- ニューエイジ・ムーブメントとの結びつき
瞑想やリラクゼーション向けの音楽としてアンビエントが広がる。 - テクノやハウスとの融合
一部のクラブミュージックで、アンビエント的な長尺のシンセやパッドが使用され、エレクトロニックアンビエントとして発展。 - 代表的アーティスト:
- Aphex Twin(Ambient Worksシリーズ)
- The Orb(アンビエントハウスの先駆者)
4. 現代(2000年代〜現在)
- ジャンルの拡散
映画音楽、ゲーム音楽、瞑想アプリ、YouTube・SpotifyなどでのBGMとしても定着。 - 新しいスタイル
- ダークアンビエント:不穏で重厚な空間を表現
- ドローンアンビエント:持続音や低音を強調した瞑想向け
- AIやデジタル技術の活用
自動生成アンビエントやインタラクティブサウンドスケープも登場
商業的成功はせず
アンビエントミュージックは商業的には大きな成功を収めることは一切ありませんでした。大衆音楽にはならずあくまで、別の目的として使用される音楽になったのです。アンビエントミュージックはヒーリングミュージックと同じ系統として扱われることが多くなり、癒し効果を求める人が購入するジャンルになりました。そのため、一般的には認知されていなくても、あなたの勤めている会社の中で何となく流れていたり、マッサージ店やカフェなどでも流れていることが多い音楽なのです。意外と身近なところで使われています。

有名アーティスト
アンビエント(ambient)のアーティストは地味です。アンビエント・ミュージックの存在自体がどうしても無名なので、環境音楽や空間の要素が強く、作品のアルバムもなかなか売れませんが、ミュージックをリリースしている音楽家は多いです。90年代の時代から現在まで人々の記憶に残るアーティストを紹介します。現代音楽の制作においてレコードについているミュージシャンのアートも注目です。場所ひとつに絞って深く表現していくジャンルです。
Enigma
ドイツを拠点とする音楽プロジェクト。主にはヒーリングミュージックに分類されますが、アンビエントミュージックにも分類されています。古典音楽とダンスビートを織り交ぜたサウンドで人気になりました。
Deep Forest
フランスの音楽ユニットです。世界各国・各地域の民族音楽のテイストを取り入れた音楽でヒーリングミュージックに分類されますが、アンビエントミュージックの曲も作っています。動物の声・自然音などを要所で混ぜているのが特徴です。
アンビエントミュージックの音楽的特徴
アンビエントミュージックの音楽的特徴は、「聴く人の空間や心に溶け込む」ことを重視した要素が中心です。分かりやすく整理すると次の通りです。
1. リズムが弱い、あるいは存在しない
- 多くの曲は、従来のポップやロックのような明確なビートを持たない
- 時間の流れを意識させない、浮遊感のある構造
- ドローンや持続音を使い、リズムより「音の質感」を重視
2. メロディよりも音色・テクスチャ重視
- シンセサイザー、パッド音、環境音などを組み合わせる
- メロディはある場合も、単調で反復的、または控えめ
- 音の「層」や「空間感」が聴覚的な中心
3. 持続音・ループ・変化の緩やかさ
- 音がゆっくり展開する
- 音量や周波数の変化が少しずつ起こることで、聴く人の意識に柔らかく作用
- これにより瞑想や作業中のBGMとしても適する
4. 空間性・残響の活用
- リバーブ(残響)やディレイで「広がりのある音場」を作る
- 聴く人に「遠近感」や「深さ」を感じさせる
- 環境音(雨音、鳥の声、街のざわめきなど)を取り入れることも多い
5. 感情表現は抽象的
- 怒りや悲しみなど具体的な感情より、落ち着き・浮遊感・静寂などの「雰囲気」を重視
- 聴く人の解釈に委ねるため、感情の強制はほとんどない
6. 構造の自由さ
- 曲の長さが長い(10分〜数時間の作品もある)
- 起承転結のような従来の音楽構造はあまり意識されない
- ループや環境音の重ね合わせで「終わりがどこか分からない」感覚を作る

アンビエントミュージック制作に必要なツール
アンビエントミュージックを制作するには、音の空間やテクスチャを重視したツールが必要です。ここでは、初心者〜中級者でも揃えやすいものを中心に紹介します。
1. DAW(デジタルオーディオワークステーション)
音楽制作の中心ソフトです。アンビエント制作では、音のレイヤーやエフェクトを自由に操作できることが重要です。
- Ableton Live
ループやエフェクト処理に強く、アンビエント制作に向く - FL Studio
簡単にシンセ音やパッド音を重ねられる - Logic Pro(Mac限定)
高品質のシンセやリバーブプラグインが豊富
2. シンセサイザー
アンビエント音楽では、持続音(パッド)や空間的な音色が重要です。
- ソフトウェアシンセ
- Serum:柔軟な波形編集とモジュレーション
- Omnisphere:映画音楽でも使われる広がりのある音
- Absynth:アンビエント向きの幻想的な音作りに強い
- ハードウェアシンセ(本格派向け)
- Moog、Korg、Rolandなど
3. エフェクトプラグイン
アンビエントの特徴である空間感や持続感を作るために不可欠です。
- リバーブ(空間の広がり)
- Valhalla Room、Altiverbなど
- ディレイ / エコー(反響や奥行き)
- EchoBoy、H-Delayなど
- モジュレーション(コーラス・フランジャー)
- 音の揺らぎや厚みを演出
4. サンプル・フィールドレコーディング
自然音や環境音を取り入れると、よりアンビエントらしい雰囲気になります。
- 雨音・風・波・鳥の声など
- マイク録音:Zoom H5やTascamなど
- 無料/有料サンプルサイト:Splice、Freesoundなど
5. MIDIコントローラー(任意)
- キーボード型やパッド型のコントローラーで、音の表現をリアルタイムで操作
- 特にパッド音や長い持続音を演奏するときに便利
アンビエントミュージック制作のステップガイド
では、初心者でも取り組みやすい形で、アンビエントミュージック制作のステップバイステップガイドを作りました。必要なツールはDAW(例:Ableton Live、FL Studio、Logic Pro)とシンセ、サンプル音源があれば十分です。
ステップ1:制作環境を整える
- DAWをインストールして起動
- オーディオインターフェースやMIDIキーボードがあれば接続
- 必要なプラグイン(シンセ、リバーブ、ディレイなど)を準備
- サンプル音源(雨音や風の音など)を用意
ステップ2:テンポ・キーを決める
- アンビエントはテンポがゆっくり〜無い場合も多い
- 60〜80 BPMが目安
- キーは自由。持続音を作る場合はモードやスケールで雰囲気を決める
ステップ3:パッド・持続音を作る
- シンセで柔らかいパッド音を選ぶ
- 低音から高音まで複数の持続音を重ねて空間を作る
- 音量やパン(左右の位置)を調整して、奥行きや立体感を演出
ステップ4:テクスチャやループを追加
- フィールド録音や自然音を加える
- 雨、風、波、森の音など
- 軽くリバーブをかけて空間に溶け込ませる
- ループ音は長めに設定し、単調にならないよう少し変化を加える
ステップ5:モジュレーション・エフェクトで変化をつける
- ディレイ(エコー)やコーラスで音を揺らす
- フィルターやEQで周波数を徐々に変化させる
- 音が変化することで長時間聴いても飽きない空間になる
ステップ6:構成を整える
- 起承転結より、「始まり・持続・終わり」を意識
- 長尺の曲でも自然にフェードイン・フェードアウトする
- 音量バランスを最終調整
ステップ7:ミックスとマスタリング
- リバーブやEQで全体の統一感を出す
- 音量ピークを抑えて、聴き疲れしない音量レベルに
- 最終的にオーディオファイルに書き出す
制作のコツ
- 音を重ねすぎず、余白を意識する
- 音の変化は徐々に・自然に
- ループや長尺音源は、時間が経つにつれて微妙に変化させる
- 集中用BGMや瞑想用に聴いたときの心地よさを優先

アンビエントミュージック制作のよくある質問
アンビエントミュージック制作に関して、初心者や中級者がよく抱く疑問をまとめました。
Q1. アンビエントは楽器がなくても作れますか?
A: 可能です。DAWとソフトウェアシンセ、サンプル音源だけでも制作できます。自然音やフィールド録音を組み合わせれば、さらに奥行きのある曲が作れます。
Q2. リズムがなくても大丈夫ですか?
A: はい。アンビエントの多くはリズムより音の質感・空間感・雰囲気が中心です。必要に応じて、ゆったりしたビートを少量入れることもあります。
Q3. 曲はどのくらいの長さにすればいいですか?
A: 3〜10分程度が一般的ですが、瞑想や作業用BGM向けなら15分以上の長尺でも問題ありません。大切なのは音の変化が緩やかで自然なことです。
Q4. アンビエントの音はどんな楽器で作るのが良いですか?
A:
- ソフトシンセ(パッドやドローン音)
- 自然音・環境音サンプル
- ギターやピアノをエフェクトで加工
特定の楽器にこだわるより、音色と空間の作り方が重要です。
Q5. 初心者でもアンビエントは作れますか?
A: はい。短時間で作る場合は、DAWのプリセットパッドや自然音サンプルを組み合わせ、ゆったり重ねるだけでも十分アンビエントになります。
Q6. どうやって曲に変化をつければいいですか?
A:
- 音量やフィルターを徐々に変化させる
- リバーブやディレイで奥行きを動かす
- 音のレイヤーを少しずつ増減させる
小さな変化を積み重ねることで、長尺でも飽きない曲になります。
Q7. 商用利用できるサンプルや音源はどうやって手に入れる?
A:
- Freesound(無料だがライセンス確認必須)
- Splice、Loopmasters(有料だが商用利用可能なサンプルあり)
- 自分で録音するのも安全でオリジナル性が高いです。
Q8. アンビエントを作るときのDAWのおすすめ設定は?
- テンポはゆっくり(60〜80 BPM)
- 長めのリバーブとディレイをかける
- オートメーションで音量やエフェクトを少しずつ変化させる
- 必要以上に音を詰め込まず、余白を意識する
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