ボサノバの歴史と特徴は？おすすめ音楽ジャンルの最新版を解説。ボサノバ音楽は50年代にブラジルで誕生したジャズの類似ジャンルです。新しい感覚の音楽で解説します。ボサノバはサンバなどと並んで南米音楽における有名なジャンルの一つです。実はボサノバは世界の音楽市場を席巻したジャンルとはいえません。
ボサノバとは？基本を理解しよう
ボサノバ（Bossa Nova）、ボサノヴァは、ブラジル発祥の音楽スタイルで、ジャズの要素とブラジルのサンバを融合させた洗練されたリズムとメロディが特徴です。以下に基本を整理します。このカテゴリーでは南米の生まれのアーティストたちが活躍しています。サウンドや奏法も最初から独特。これらがヒットして世界的人気となります。
1. 起源
- 時期：1950年代末〜1960年代初頭
- 場所：ブラジル、リオデジャネイロ
- サンバを基盤に、ジャズのコード進行やハーモニーを取り入れて誕生。
- 「新しい傾向」という意味のポルトガル語である “Bossa Nova” から命名。
2. 音楽的特徴
- リズム
- サンバのリズムを簡略化した柔らかい拍子。
- ギターの指弾きでリズムを表現することが多い（ギターが中心）。
- メロディ
- 流れるような旋律で、控えめで落ち着いた雰囲気。
- 歌声はしばしばささやくように柔らかく表現される。
- ハーモニー
- ジャズ由来の複雑なコード進行（7th, 9th, 13thなど）を多用。
- サンバのリズムにジャズの和声を組み合わせることで独特の雰囲気を生む。
3. 文化的背景
- ブラジルの中産階級の若者たちによってカフェやリオのビーチで発展。
- 「都会的で知的な音楽」として、サンバよりも落ち着いた洗練されたイメージ。
4. 代表的なアーティスト・曲
- ジョアン・ジルベルト（João Gilberto）：ボサノバの創始者的ギタリスト・歌手
- アントニオ・カルロス・ジョビン（Antonio Carlos Jobim）：作曲家、代表作「イパネマの娘」
- ヴィニシウス・ヂ・モライス（Vinicius de Moraes）：詩人・作詞家として名曲多数
5. ボサノバの魅力
- 落ち着いたリズムとメロディでリラックス効果が高い。
- ジャズやラテン音楽の要素を取り入れているため、国際的にも人気。
- カフェ音楽や映画音楽、ヒーリング音楽としても活用される。
ボサノバの歴史について
ボサノバはブラジル音楽における主要ジャンルの一つで、サンバと並ぶ音楽です。1930年代ごろには黒人音楽家などがサンバと差別化するためにこのジャンルの言葉を使い始めていました。実際にこの音楽が認知されたのは1950年代以降で、リオデジャネイロ付近の白人階級によってこのジャンルは正式に生み出されました。
ブラジルの伝統的な大衆音楽として1960年代にブラジルで最も有名な音楽として認知され、新しいポピュラー音楽ジャンルとして注目されました。音楽的特徴はジャズに影響された都会的な音色を奏でるピアノやサックスなどを使った音が多いです。特にボサノバはカフェミュージックとしてよく使われています。
1. ブラジルの音楽文化の基盤
- サンバ：20世紀初頭にリオデジャネイロで発展。カーニバルやストリート音楽として市民に広まる。
- ショーロ（Choro）：19世紀末からの都市音楽。メロディとハーモニーの自由度が高く、後のボサノバに影響。
- ブラジルの音楽は多文化的で、アフリカ系、ポルトガル系、先住民の要素が融合。
2. 1950年代の社会的背景
- ブラジル中産階級の若者が都会文化を形成し、カフェやビーチで音楽を楽しむ環境が拡大。
- 経済成長と都市化の進展により、洗練された都会的音楽へのニーズが増加。
- 若者たちは「知的でおしゃれな音楽」を求め、サンバを簡略化し、ジャズ的要素を取り入れる動きが生まれる。
3. ボサノバ誕生のきっかけ
- 1950年代末〜1960年代初頭：リオデジャネイロの南部地域（イパネマ、コパカバーナ）で発展。
- ジョアン・ジルベルトがギター指弾きのリズムを確立。
- アントニオ・カルロス・ジョビンがジャズ風コード進行を取り入れ、詩的な歌詞を添える。
- カフェ文化と若者文化が融合して「新しい傾向＝Bossa Nova」と命名。
4. 国際的影響
- 1960年代、アメリカやヨーロッパのジャズミュージシャンと交流。
- スタン・ゲッツとの共演（『ゲッツ／ジルベルト』アルバム）により世界的に注目。
- 「イパネマの娘」などの名曲でボサノバは国際的に広まり、ジャズやポップスにも影響。
5. 社会・文化的意義
- 都会の中産階級が楽しむ「知的で洗練された音楽」として位置づけられた。
- サンバの力強さや踊り要素よりも、静かで落ち着いた表現を重視。
- ブラジルの文化アイデンティティを保ちながらも、国際的に評価される音楽ジャンルとなった。
ボサノバの音楽的特徴
ボサノバの音楽的特徴は、サンバのリズムを基盤にしつつ、ジャズのハーモニーや繊細な表現を取り入れた点にあります。以下に整理します。ゆったりとした音楽にあふれ、これが重要なポイント。これが浸透して成功したのです。
1. リズム
- サンバのリズムを簡略化・洗練化した柔らかく落ち着いた拍子。
- ギターの指弾きで、ベース音＋高音部のアルペジオを組み合わせて独特のリズムパターンを作る（ジョアン・ジルベルトのスタイルが有名）。
- ドラムやパーカッションは控えめで、リズムよりも雰囲気を演出。
2. メロディ
- 流れるようで穏やか、やや内省的な旋律が特徴。
- 歌唱はささやくように控えめで、感情を静かに表現。
- メロディの動きは滑らかで、急激な変化が少ない。
3. ハーモニー
- ジャズの影響が強く、7th、9th、13thなどの複雑なコード進行を使用。
- 和声の色彩が豊かで、サンバの単純なコード進行とは異なる。
- メロディとコード進行の組み合わせによって、都会的で洗練された雰囲気を生む。
4. 楽器編成
- ギター：指弾きが中心、リズムと伴奏を兼ねる。
- ピアノ：和声の豊かさを補強。
- ベース：低音を支え、リズムを安定。
- パーカッション：控えめに、軽いブラシやカウベルなどを使用。
- ボーカル：柔らかく、感情を抑えた表現。
5. 全体的な雰囲気
- リラックスした、穏やかで洗練された音楽。
- カフェやビーチ、映画音楽、ヒーリング音楽としても人気。
- サンバの陽気さよりも都会的・知的・内省的な印象を与える。
著名なボサノバアーティスト
ボサノバの歴史を形作り、世界的に広めた著名なアーティストを整理すると以下の通りです。
1. ジョアン・ジルベルト（João Gilberto）
- ボサノバの創始者的存在。
- ギターの指弾きによる独特のリズムと控えめな歌唱スタイルを確立。
- 代表作：「Chega de Saudade」「Desafinado」
- サンバのリズムを洗練させ、ボサノバの基礎を作った。
2. アントニオ・カルロス・ジョビン（Antonio Carlos Jobim）
- 作曲家・ピアニスト・ギタリスト。
- ジャズのコード進行を取り入れ、ボサノバを国際的に広めた。
- 代表作：「イパネマの娘（Garota de Ipanema）」「Wave」
- ジョアン・ジルベルトと共演し、ボサノバ黄金期を牽引。
3. ヴィニシウス・ヂ・モライス（Vinicius de Moraes）
- 詩人・作詞家としてボサノバに貢献。
- 多くのジョビン作品の歌詞を手掛け、文学的で情感豊かな歌詞を提供。
- 代表作：「イパネマの娘」「Chega de Saudade」など。
4. その他の著名アーティスト
- スタン・ゲッツ（Stan Getz）：アメリカのジャズサックス奏者。ボサノバを国際的に広めた。
- エリス・レジーナ（Elis Regina）：ブラジルの女性歌手。情熱的かつ表現力豊かなボサノバを歌唱。
- カルロス・リラ（Carlos Lyra）：ボサノバ作曲家・ギタリスト。サンバとジャズを融合。
ボサノバはなぜ発展できなかったのか
ボサノバは1960年代が絶頂期でしたが、その勢いを維持して世界を席巻する可能性があったのです。しかしそれはできませんでした。ブラジルの政治的な背景により、ボサノバは発展する機会を失ってしまいました。
歴史的背景
ブラジルでは1960年代初めにボサノバは全盛を極めましたが、1964年に樹立した軍事政権はとても高圧的で、共産主義に近い体制だったということもあり、文化面で弾圧を受けました。1970年になると、ブラジルではアメリカ文化を食い止め、ブラジル独自の芸術・文化を発展させようという運動が起こったのですが、当時の親米ブラジル軍事政権にとっては、反米的＝反政府的な運動であると考えられ、ボサノバは弾圧を受けました。これ以降ブラジルではボサノバは衰退し、ブラジリアン・ポピュラー・ミュージックが一番人気になりました。21世紀のブラジルでは白人階級の地位の高い人たちが教養として学ぶ音楽という位置づけになっており、教養音楽という立ち位置で落ち着いてしまっています。
現代の若者
ブラジルの21世紀の社会はボサノバがそれほど受けていません。歴史的背景により弾圧されたことが大きい要素です。現代の若者は欧米のヒップホップやポップスを好むため、あまりボサノバは聴かれていないのです。また若者のイメージとしてボサノバは高齢者の聴く音楽というイメージが定着しており、実際のところ、高齢者しかボサノバを聴いていないのです。あまり大衆的な音楽ではないという概念がブラジルでは定着してしまいました。
カフェミュージック
大きく衰退してしまったボサノバですが、21世紀に入ってもある分野においてはとても強烈な需要を産んでいます。ある意味、世界的な人気ともとれるのですがどの分野かというと、カフェです。どのカフェでもジャズやボサノバはよく流れていると思います。ボサノバはヒーリング音楽という位置づけにもなっており、人の心を癒したり落ち着かせたりする効果があることが分かっています。そのためカフェのお店のほとんどではジャズやボサノバなどをよくかけているのです。とても地味な立ち位置にはなってしまっているものの、これからもカフェ店舗などではボサノバは生き続けるのではないかと思います。
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